投稿日: Jun 01, 2010 3:9:19 PM
出版に夢が持てるか心配な方へ
若者の活字離れは何を根拠に言っているのか、何と比べているかが曖昧である。日本の出版点数はそもそも多い。過去はもっと多かった時がある。今は人口減少期に入っているのだから少々減るのは他業界をみてもフツーのうちに入る。雑誌の激減、特に総合誌の落ち込みが目立った現象だが、自分たちがよく読んでいたものの部数が減ったことをもって活字離れと感じているのではないか。
書籍はだいたい下げ止まっているが、それでも団塊の世代が30歳代だったころの水準なので低いとはいえない。総合誌の下落はデパートとショッピングモールや専門店・量販店の競争に似ている。デパートに行くことが減ったように専門情報の方に人は動いたので、部数はバラけて、みんな小さくなっていく。専門性にも新たな課題がある。SWINGジャーナルの休刊は象徴的で、日本の音楽産業の特殊性を反映しているのかもしれない。趣味の人は国内盤など目ではなくなったので、今後の専門誌は世界に通用するようなものであるべきだろう。
読書時間についてはいろいろな調査があるが結果は相反するものも多く、しかも分析は内容がマズくて縮小したのか、縮小してマズくなったのか、ニワトリと卵のような状態である。少なくとも子供の読書時間の調査では減っておらず近年増えた時期もあった。若者向けにも電撃文庫のような順調なものもあり、必ずしも活字離れの様子は無い。家庭内にゲームやPCやケータイがあっても、平均値ではそれらのひとつくらいの読書時間は確保されているようだ。
日本人は文字好きであるように思える。揮毫、漢検など一般市民レベルでも熱心さが感じられる。またポケベルからケータイメールに至る文字コミュニケーションというのが若年層でブレイクしたように、書き言葉はそれなりに達者である。もちろん彼らの書くものはちゃんとした日本語になっていないという人もいるが、それはむしろ最近の日本語のしゃべり言葉の方が怪しいことが文字に反映しているのかもしれない。
いずれにせよ出版は国内産業に留まれば縮小し、世界に出れば広がる産業なのである。また活字といっても鉛の活字の話をしているわけではないから、どんなメディアにも文字や書き言葉は使われていく。電子書籍も広がりを持つだろうから、DAISY(ディジー)のような読み上げを使う音声出版も今後のテーマである。出版を末広がりに考えないで、利権確保に狂騒する姿は見苦しい。