投稿日: Mar 18, 2015 12:25:36 AM
シャープは液晶に社運をかけた会社だった。しかし会社の体質は家電屋であったし、元はシャープペンシルに代表されるように家電に限らず多様な製品開発をしていた。液晶開発に傾斜したのは確か大阪万博の前だった。高度経済成長中の大阪万博では大企業がこぞってパビリオンを出展していたが、シャープはそれを中止して液晶開発につぎ込んだ。当時の液晶の用途は時計とか電卓でしかなかったが、後にあらゆるディスプレイに手を広げるようになったのは、シャープを先頭に頑張ってきたからだろうと思う。なにしろ液晶はブラウン管もプラズマも滅ぼしてしまったのだから。
そのずっと前からシャープはELもやっていた。そういう基礎研究から取り組む姿勢は、太陽電池でもある程度は成功した。今でも液晶はigzoのように先端を行っているシャープであるが、液晶の製造だけでは会社が維持できないところまできている。今日の液晶の競争では、液晶だけを生産するジャパンディスプレイに負けそうな状態になっている。これらを振り返ると、基礎研究と、量産競争と、家電という分野は、必ずしもうまく重なるものでは、すでになくなっていることがわかる。つまり今までシャープがやってきたこれらの整理が迫られているわけで、もし液晶の量産競争に集中すると、かえって会社全体がコケるかもしれない崖っぷちにきているように見える。
シャープが液晶工場の会社になってしまったのは現金をまわす必要があったからだろうが、むしろ工場は外部生産に切り替えても、それまでのシャープを支えていた「目のつけどころがシャープ」なユーザビリティの高い家電開発の方が生き残る可能性は高いかもしれない。あるいはイノベーション指向で基礎研究だけしっかり行って、ライセンスで喰っていける道もあるのではないか?いずれにせよ規模をうんと縮小してでもクリエイティブな体質の会社にするしかないと思う。
実際にはシャープは近年には小手先のマーケティングであるガラパゴス戦術でコケてしまったように、クリエイティブではうまくいっていないのだが、それも電子書籍端末やスマホというハードウェア事業に比重が行きすぎていたから、適切な戦略ができなかったのではないかと思う。
実はシャープだけではなく、日本の多くの量産品のビジネスが陥っている問題は、物量を尺度にする経営から抜け出せていないことで、高付加価値を維持するブランド戦略の欧米優良企業を指をくわえてみていても自分で実践ができないことだ。家電でも高級家電路線というのもあるのだろうが、マーケットシェアが数パーセントでもしっかり利益を出すというところは日本企業の鬼門のようになっている。
なにしろ、基礎研究、製品力、量産、という従来の3本柱は成り立ちにくくなっていることを良く考えよう。
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