投稿日: May 23, 2010 12:19:14 PM
ネットの力を本のビジネスにどう結びつけるか迷う方へ
2010年05月21日(金)に行われた『電子出版の状況整理と無料経済の関係』セミナー#kix0521のトップバッターは、NHK出版の松島倫明氏であった。近年のWebでのサービスモデルで、多くの人に無料で提供するが有料もあってビジネスが可能になる仕組についてクリス・アンダーソンが書いた『フリー』の翻訳出版を手がけられた方である。アメリカの原本の場合は発売時にネットで本の内容を無料ダウンロードをできるようにしてキャンペーンを行ったので、日本でも発売にあたって実際に無料ダウンロードを行った経緯を説明された。
通常なら新刊は新聞1面の下に全5段広告を出すのをやめて、その費用をWeb/Socialプロモーションにまわした。PDFを無料ダウンロードできる範囲は先着1万人とし、最大でも2週間と設定したが、実際は43時間で1万人に達したので、そこで止めている。この間にtwitterでつぶやいてもらったりオンラインメディアに露出している。無料公開の43時間中にAmazonでの本の売れ行きには影響が出ず、上がりもしなかったという。実際にダウンロードした人がどれだけ本を購入したかはわからない。書籍ビジネスとしては18万部売ったというから大成功だろう。
ダウンロード1万人のうちtwitterでの登録は2割強で、2日で広まり、やはり相性がいいことが実証された。マスメディアへの反映は1ヶ月ほどのタイムラグがあって、ネタとして取り上げられることの効果があった。フリーとはいってもどんなソーシャルマーケッティングをすべきかは本の内容によって異なるとか、無料公開の範囲をどうするかなど、毎回オリジナルで考えるべきものなので、従来の本の売り方とは根本的に違うものという印象だった。もし10万ダウンロードなら何部売れたのだろう。まだ誰も経験的な勘を持ち合わせていない。
無料経済 freemium=free+premium(割増料金) に話を戻すと、従来は95%有料で5%くらい無料の試供品を提供するようなものだったのに対し、今のサービスは95%のユーザが無料で5%のユーザからお金をとるようなものである。さてこれが電子出版に通用するかどうかの議論をする時間がなかったのだが、すでにCookpadなどでは十分実現していると考えられる。問題はこれを電子出版とカテゴライズするかどうかだね。
すでに電子出版の時代であるともいえるし、今の紙のコンテンツのうちには、どのようなデジタルのサービスモデルにすればよいかわからずに終わってしまうものもあるだろう。モデルつくりそのものが経営にならなければいけない。