投稿日: Sep 15, 2015 12:50:0 AM
IGASのセミナーで、+DigitalMarketing というセッションのモデレータをさせてもらった。「+」とは従来の印刷のドメインにデジタルマーケティングというビジネスを付け加えるということの象徴であろうが、肝心の印刷業界の関心はそれほど高くなかったようだ。しかし驚いたことに人は集まっていて、これはむしろデジタル印刷のベンダーがそういう分野での応用を狙っているからであろう。プロダクションプリンタの画質が高まって、従来オフセット印刷の領域でも、何らかの可変印刷をすることが当面の目標になる。
セッションの登壇者は、デジタル広告のコネクトム、アナログ広告の中日新聞社、広告発注側のライオン、印刷側の大日本印刷の4名で、バランスよく発言がされて、マーケティング・プロモーション全体の動きが捉える事が出来た。このことはセッションの本番とは別に、打ち合わせで集まった時とか、控室の雑談などでも感じられて、登壇者自身に喜んでいただいた。
つまりそれぞれの立場での利己的な主張をするのではなく、デジタルマーケティング時代の新たな関係作りに向けての動きが起こりつつあるということである。
別の言い方をすると、従来の紙や電波メディアではお互いの境界がはっきりしていたのに対して、デジタルマーケティングではメディアの運用の裏でデータの受け渡しなどが起こるので、境界を越えた関係作りをしなければPDCAをまわせないからだろう。ネットの時代ならこのPDCAは瞬時にまわるようになって、そのことは大きな競争力になる。
一般に分かりやすい話としてはデジタルならPVがとれるとかコンバージョンで評価できるとかいわれるが、これはマーケティング全体から見ると、ほんの一部分の話で、結局どういう反応があったか、効果があったか、次は何をしなければならないとか、ビジネスに意味のあることをしようとするならば、個々のマーケティングツールの能力以上に、マーケティングからプロモーションに至る全体設計が重要になる。
しかもこれに関るパートナー企業同士がWinWinでやっていけるようにしないと、長続きはしない。今までのデジタルメディアは初体験であることが多かったので儲けは度外視して実験として行っていた場合が多かったが、これからは経営面からも継続可能なコスト・料金のサービスにして、全体をエコシステムとしてデジタルのマーケティングができるようにしなければならないなあ、というのが当日みちびきだされたことであった。
逆に言うとツールの効能の期待感とか、システムの構築だけが簡便とか、新技術のデモとかで終わってしまうようなものには飛びつかないことである。それらも経験としては必要な場面もあるが、それよりも自分の事業ドメインにふさわしいエコシステムを思い描くことが、よいパートナーと長く仕事をする上では重要なことだと思わされた。