投稿日: May 09, 2011 10:29:26 PM
Social対応は必須か疑問な方へ
ちょっと前まで、顧客満足とか顧客視点ということが重視され、CRMのシステムを構築するとか、顧客との長い付き合いの中で利益を最大化しようという Life time value の考え方に変える動きがあった。これはマスプロダクトを広告宣伝によって市場に投入していくかつてのビジネスとは異なって、顧客視点で自社なりビジネスのあり方を考えようというものである。実際にはまだそこまで整備していないところの方が多いはずだが、未消化のままでfacebookが何億ユーザという時代に来てしまった。ソーシャルも顧客視点も似たように思えるかもしれないが、社内のCRMとソーシャルネットワークはどう関係するのかなど、メディアやシステムに関係する人にとっては悩ましい問題も増えてくる。
このような捉えどころのないソーシャル云々に議論を費やす前に、なぜそのような時代に向かっているのかを振り返って考えてみたい。IT関係者は1980年代からのOAやダウンサイジングの中で常時新しいシステムへの移行に携わってきたわけだが、いくら新しいハードやソフトにシステムを移しても、それを利用する狙いや考えが革新しないと、システムがビジネスに役立たない。たとえば今でもCOBOLを使いたいという「需要」はあるが、それは過去のバッチのシステムを置き換えたいところから来るもので、ネットでリアルタイムにマーケティングをしてリアルタイムに販売から配送まで処理できるように、ビジネスを変えてしまうことを考えているわけではないことが多い。今の商機はネット上にあるので、考え方を変えないでシステムだけ変えても経営は改善しない。
1980年代においては管理系をアナログ帳票からデジタルでの集計や転記に変えてスピードアップと精度向上をすることに大きな意味があった。しかし1990年代になってネットが発達しだすと、下図のように社外も含めてビジネスの工程を一気につなげて生産性を向上するとか在庫を減らす、などができるサプライチェーン化がいろいろなビジネスに取り入れられた。管理系がデータだけを扱っていたのにここではロジスティクとか物流までがコンピュータで管理されるようになった。
インターネットやケータイが普及した2000年代においては冒頭の顧客視点が重視され、ツタヤのTポイントのような利用者の利便性第一のものがブレイクする。サプライチェーンのような垂直的なビジネスのプロセスだけではなしに、いろいろな連携で顧客価値を最大にしようということが行われている。しかしここまでは売る側の意図が先にありきのモデルである。最近何が変わってきたのか。
例えばある年に水筒の売り上げが倍になった。これは広告代理店がキャンペーンを仕掛けたわけでもなく、ペットボトルの使い捨てに疑問をもった人が増えたからである。人々の消費行動は「欲しい」だけが原理ではなく、共に考えて行動するという面が強くなる。こういった傾向に役立つのがソーシャルメディアであるといえる。これに対してメーカー側の開発から販売までの垂直のプロセスは無力になることがある。震災の影響で東京では節電が続いているが、駅の照明を暗くしていく時に広告の電飾看板やサイネージが煌々と光っていては消費者の神経を逆なでするであろうということで、これらの広告はかなりの部分が停止してしまった。駅の照明をうんと減らして広告を照明代わりにすることも可能かもしれないが、消費者が考える社会的価値に照らし合わせて企業は行動せざるを得ないのである。
しかし社会的価値を一元的には考えてはならない。ソーシャルは多様であり、子育てママという意味でのソーシャルと、高齢者介護という意味でのソーシャルは、同じ一人の人間でも異なるかもしれない。いずれにせよ選挙の当選確実が開票前から判別するように、ソーシャルメディアがビジネスの予測に使われる時代になろうとしている。