投稿日: Oct 01, 2014 2:15:13 AM
前職は公益法人であったので、私的な企業活動では不可能なことも随分たくさん行っていたし、そういう方向を意識的に探っていた。しかし時代の流れとして感じていたのは、次第にいろいろなことをオープンにしなくなってきたことで、それが情報交換やコラボレーションの障壁となりつつあることだった。例えば何か新しいサービスとか開発をした場合に、事例を挙げて説明すると分かりやすいのだが、事例を発表するには顧客の許諾が必要になる、などである。それはそうなのだが、それでも以前は口頭で許可をもらって済んでいたのが、正式なルートで依頼してかなり時間がかかる検討をしてもらわなければならなくなり、次第に許可が下りづらい状況になっていった。
そこで研究会やコンファレンスでは、いっそのことクライアントと開発者をセットにして、新たな試みについて話してもらうセッションなどをすることもあった。つまり許諾を突破するために開催方法を組み換えたわけである。しかしこういう対応がいつでもできるとは限らない。今はよその会社や組織の手伝いとして、いろんな企画や取材や原稿というのをする場合があるが、先に媒体上での扱いが決まっている中でコンテンツ制作をするとなると、許諾という点では突破できないものの場合が大半であって、写真は載せては困る、社名や商品名は出せない、開発元は出せない、などなどがフツーになりつつある。これでは取材や原稿にかけた結果のコンテンツの効用は半減してしまうように思う。
つまり公表された情報というのは、分かりやすいところとかオイシイ部分が欠落したものに、すでになっている場合が多いのだ。それでも見る人が見ると、その記事には隠されている部分がピンとくるので、情報がクローズド化したわけではないが、障壁は高くなりつつあると思う。特にBtoBのニュースリリースなどは分かりにくくなっている。BtoBでは実際には営業活動が主体でメディアにはあまり依存していないこともあるのだろうが、セミナーという事業形態も含めて既存の情報伝達方法は無力化しつつあるように思える。では代わりにSNSが役に立っているのかというと、そこまでは行っていない。
経済の沈滞というのと情報のクローズド化というのは何らかの相関があって、鶏か卵かどちらが先かという問題ではなく、現状打破の意欲が新しいサービスもメディアも産み出すことになるのだろう。
SoftBankのvisualmallのBOOK SUITE というePUB3コンテンツ制作・配信管理クラウドがあるのだが、このサイトを見ても、おそらく何に使われていてどのような効用があるのかはさっぱりわからないだろう。実はこのタブレット向け電子カタログはBtoBなどで営業マンが持ち歩くものが主で、こういった属人的メディアこそが、無力化した既存メディアの空隙を埋める役割をしつつあると思う。
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