投稿日: Nov 26, 2012 6:1:47 AM
読者像が捉えにくいと思う方へ
日本で有名なオークションサイトのヤフオクと、世界的なオークションのeBayを比べると、機能的あるいはITの活用という点では雲泥の開きがあることを過去にも何度か書いた。ある意味ではヤフオクはシステム的には手抜きをしているようにも見えるが、日本人のモラルやメンタリティからすると十分であるともいえるのだろう。つまりECの機能が高ければ高いほどビジネスはうまく行くとは思えない点があるからだ。eBayの場合はいろんな国の出品者や購買者が入り混じるので、かなり厳格な運用をしないといろいろなトラブルになるだろうが、ドメスティックなヤフオクではトラブルは当事者間の問題としてしまって、YahooJapanはルールを厳密にはしない方法をとっていると思う。
つまり各国の国民性に合わせた取引が現実社会では行われているわけで、それをそのままIT化しても異なる国では思うように使ってもらえないことがある。eBayは過去に日本でやろうとしたことは何度かあったが撤退してしまったのは、日本独自のやり方を適用するというようには考えなかったのだろう。
これは日本のコンテンツを海外に売ろうとするときにも遭遇する問題で、ネット時代だから概念的にはどこにサーバがあろうとも世界中を相手に出来るはずであるのに、世界どこでも通用するようなビジネスルールは現実にはありえない。かといって相手国ごとにルールを変えるような運用もできない。とするといっそのことグローバル展開はeBayやAmazonなど既存のサービスを使ったほうがよいことになる。eBayでは1960年代から80年くらいまでの日本の写真家の写真集の印刷本がよく売られていて、しかも結構な値段がつくものもある。こういったルートの書籍や電子書籍のマーケティングというのが有り得るなと思う。
つまりグローバル展開は上記の程度にしておいて、国内の競争にもっと勢力を使わなければ、紙の書籍の縮小を電子書籍で埋め合わせることも難しいだろう。大原ケイさんが来られた時に、マンハッタンで居心地の良さが売り物のくつろぎの書店の店舗内サービスがショボくなってきたことを聞いた。これは日本でいえばジュンク堂のような雰囲気ともいえる。かつてのようにどこかの真似では客集めに通用しない時代であるので、記事『Amazon vs 書店』で触れたように日本独自の書店の価値や使いやすさを開発する必要がある。しかしすでにTutayaやビレッジバンガードなど日本の成功モデルがあるのに、正面からこれらやBookOffを評価してこなかった出版業界は将来の可能性を自ら閉じているように思える。
電子書籍のビジネスが掛け声だけで動いていなかった段階から、関連諸団体ばかりが増え、またコンテンツ・制作・流通の各会社の連携がいろいろなグループとなり、取り決めばかり話し合っていて、実際に読書をする人を観察していなかったのではなかったかという気もするほどであるが、やはり読者に近づいていくのが最大のマーケティングだろう。
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