投稿日: Jun 26, 2015 3:2:21 AM
デジタル制作環境になってデータの扱いは楽になったような、ならないような、いろいろ問題を抱えているなと思う。今は殆ど製版フィルムを保管しているところがないと思うが、フィルムの保管は面倒であり、探すのも大変だし、何年か後に使おうとしてもストリップフィルムが剥がれているとか、信頼性に欠けたり、取り扱いも大変だった。版下の保管も同様で、ノリが茶色になってスキャンもできなくなったりした。それがデジタルデータでは何の劣化も起こさないのだから、一度創られた「コンテンツは不滅です」といってもよいほどになった。
しかし実際には記録媒体や記録フォーマットの課題があって、30年前のデータが保管されていたとしても、それを読みだすのに苦労するよりは、新規に作成した方が楽であろう。そもそもデータ以外に印刷物とかフィルムが残っていないと、コンテンツの姿がわからない。その姿から再現やリメイクを試みるわけだが、今のデジタルメディアは動画やアプリも中に含まれているとなると、将来データだけ残されていてもリメイクは困難かもしれない。
ゲームの世界も似たような基盤なのだが、過去のゲーム機のプログラムが今日のコンピュータ環境でも動かせるようなエミュレータが作り続けられている。これはゲームが限られた機種しかなかったことで可能なのだが、その他モロモロのデジタルメディアでは初回限定の命であって、短命になってしまうものが多いように思う。CMSを使って毎日新しい情報を提供しているサイトは多くなったが、一般にバックナンバーを見やすくすることはできておらず、殆どが週をまたぐと一旦は埋もれてしまって、検索エンジンからのリンクで人々に知ってもらうことになっている。
それでもWebであれば過去のデータも役立つのだが、電子書籍系のデジタルコンテンツになると、立ち読みに相当する技術も普遍化していないので、データが埋もれてしまう率はWeb以上になるだろう。そうすると、出来上がったメディアを長く使用するよりは、その元となったデータを何度も再編集して新しいメディアとして更新していくような使い方になるのではないか。
これはEPUB3のようにマークアップが標準化すれば可能なことで、メディアは死んでもデータは生きるというという時代になっていく。冒頭のデータ保管の問題も、更新頻度が高くなるならば、いろいろなところに過去の制作の痕跡が残っていることでもあり、全く失われるとか、再現の手掛かりがないということにもならないだろう。
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