投稿日: Oct 11, 2012 2:32:31 AM
埋もれた情報を発掘したい方へ
私は今は練馬の端に住んでいるが、そうした理由は石神井公園、井の頭公園、善福寺公園、武蔵関公園などの湧き水のある自然環境に囲まれているから、子育てによいと思ったからだった。それはそれでよかったと思っているが、一方で何ともいえない物足りなさを感じるのは年のせいだろうか。かつて大阪に居た時には、大阪駅から急行で20分くらいのところではあったが、江戸時代には集散地であったことから幕末の芝居小屋がピンク映画館になっていたり、駅前商店街の裏通りには土蔵が並んでいたり、元遊郭の路地があって風情を残していて喫茶店街になっていたり、江戸時代後期の建物が美術館になっているとか、100年前のうどん屋がそのまま営業している、酒蔵がある、茶道用の木炭の流通が盛ん、古墳もいくつかある、地名は古代に大陸からの渡来人由来であるなど、特別に何かの役にはたたないが、話のネタとなるものが豊富にあった。
そういった環境に居た時には全然気にしなかったことだし、自分から調べることもしなかった。ピンク映画館が木造ですごくボロく客席の間にも柱があったり、小さいところなのに2階席があってヘンに思ったが、後に昔の芝居小屋を知ってそうだったのだと気づく。友達が酒蔵でバイトをしていて、仕事後に全身から酒の匂いを発しながらやってきたことがあった。その酒蔵は秀吉陣に酒を供給していたがために、江戸時代になって灘にお株を奪われたとか、駅から何キロ離れると田んぼがあるが、その先の川沿いには弥生の大規模遺跡がまだ眠っているなど、住んでいると何となく日本の歴史を背負っている感じがするのが近畿の各郊外の生活だった。
これはメディアの世界でいえば古本屋のようなものかもしれない。新しいテクノロジーで、また人を驚かせるようなコンテンツを次々に出して、人を刺激し続けなければならないという強迫観念のようなものが、メディアのビジネスには感じられることがことがある。若者向けにはそういった傾向は今後もあるだろうが、もっと広い層を対象にすれば、おそらくそういったコンセプトは長続きはしない。デバイスでいえば機能よりも使い心地が重視されるようになりつつあるし、そこで扱う情報も直接役立つとか人気ランキングとかいった尺度で測りきれない心地がより求められていくだろう。またそうした情報環境が自然に子育てに役立つとか、文化的なrichさを増すものへと向かうことになるだろう。
つまり新製品を出してプロモーションして大量に売りつけて、大量に廃棄して、しばらくすると何の痕跡もなくなるような、産業革命的、工業的、消費文化的な延長にメディアビジネスを考えるのはふさわしくないのではないか。親から子に、孫に伝え、共有しあうようなコンテンツを扱っていくようになるのではないか。しかも従来のマスメディア型の情報産業では拾い切れなかったローカルな情報の比重が増えていくのではないかと思われる。知らない地に行って歴史的に凄いものが何もないようなところでも、みなさんが大変居心地よく暮らしているところは、やはりいいところであるが、その理由は何かまだ十分説明されていないものが多い。日本の高齢者にもうひと肌脱いでもらって、次世代をrichにするために情報の発掘とかアーカイブをしてもらいたいものである。
電子出版再構築研究会 名称:オープン・パブリッシング・フォーラム Ebook2.0 Forumと共同開催
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