投稿日: Mar 05, 2014 12:29:1 AM
推進にはトップダウンが必要
スマホが世界を制覇したのと対照的に、PCからタブレットへの移行というのは意外に難航しているものが多くある。PCの利用のうち、単純な操作で済むことはスマホに随分移行してきた。記事『聞き放題・見放題への挑戦』で書いた音楽ダウンロードも、わざわざPCで作業してiPodなどに移して使うよりも、普段持ち歩いているスマホで聞き放題の方がはるかに便利である。それでもiPodを使うのは、フツーには手に入らない音源を聞いている人に限られてしまい、デッカイ市場ではなくなってしまう。
このように従来はPCを介在させなければならなかった単純作業を、スイッチオンですぐに始められるタブレットで、どこでも使ってもらおうという分野はいろいろあるのだが、そのような開発が進まず、したがってタブレットの数も思ったほどは増えず、電子書籍の端末の分母も広がらないという状況である。その理由は意外に身近なところに敵というか抵抗勢力がいるからである。
それはWebであり、従来のシステム部門であるようだ。つまりWebで出来上がっているアプリをタブレットのアプリにするにはユーザインタフェースが異なったり、プリントはどうするのかとか、細かい仕様の変更が伴い、それを何か月もの間の会議で決めていかなければならにことがある。PCもタブレットも両方平等に扱えなければならないという考え方がモノゴトをややこしくしている。
もし組織のトップが鶴の一声で、ある種の業務をタブレットを中心に進めるように命じて、PCをオプションにしてしまえば、このような何か月も検討に費やす必要はなくなってしまう。この決断のなさがイノベーションを阻害していると思う。
かつてのパソコンはハードウェアの面では万能コンセントのようにいろいろな機器につなぐコネクターがいっぱいあった。しかしそれを引きずっていてはイノベーションはなく、ノートPCを経てタブレットに至る進化というのはレガシーと断絶することの連続であった。
パソコンの利用面も保存・ログ・プリントなどレガシーのやり方をひきずっていてはイノベーションはないだろう。
電子教科書問題もそうだが、組織にとって既存の仕事の進め方と新しいやり方の2重の運用をしなければならないのは大きな負担であるから、新しい方法の導入に際しては主従関係を変えていかなければならない点が多く発生する。しかし従来は主であったやり方を従に切り替えようとすると、既存のやり方を決めた人や使っている人の抵抗にあう。
だから主従関係の変更はトップマネジメントで行わなければならない。その点では Steve Jobs はよい手本を見せてくれた。Steve Jobs が日本でどれだけ売れたのか知らないが、日本でトップダウンによるイノベーションが増えているようにも思えない。
トップの人がPCやタブレットのことをジャッジできないのかもしれないが、少なくとも現場で何か月も無味な会議が繰り返されていることには気づかなければならない。そして適切なマネージャーに入れ替えることをしないと日本からイノベーションはなくなってしまう。