投稿日: Aug 03, 2011 10:47:32 PM
後ろ向きで始めると発展は望めないと思う方へ
スマホやタブレットの普及のおかげで、それらにコンテンツを提供する電子出版のビジネスには関心がもってもらえる時代になった。それらにはどの程度の期待がかかっているのだろうか? うまく企画書を書くと投資が得られるかもしれないが、本当にビジネスとして成長するのだろうか? 昨年は携帯のキャリアと印刷会社などが組んで電子書籍のサービスを提供しようというプロジェクトいくつかできた。これの意味するところは、出版社以外はいくらか投資してでも新しいビジネスをしようとしている点だろう。これも、ある「期待感」に基づいている。
アメリカでは2011年前半で、eBookの売り上げは前年比2.6倍に跳ね上がり、ちょうどその増加分ほどの紙の一般書は売り上げが減になった。出版社も読者も印刷代を負担しなくってよくなったというメリットを享受している。このようにカニバリズムの段階を迎えるとフリーミアムは破綻だ。日本の出版社を相手にした企業連合は、こういうカニバリズムに耐えられるのだろうか?それとも分解していしまうのだろうか?私は既存のビジネスを守る面が強い日本の企業連合の結合は弱いと思う。アメリカのeBookは対象デバイスやフォーマットについてはゼロ年代後半に登場の新しいものを採用しているのに対し、日本の企業連合の技術はケータイマンガ・ケータイ書籍以来の「在りモノ」に基づいている。アメリカは数少ない流通に集中するのに、日本は各社ばらばらで雑多で、細かい電子書店がWeb上にいっぱいある、などが弱さをあらわしている。
だからスマホやタブレットを相手にしていれば先進的なわけではなく、これからビジネスを円滑に転がすものでなければならないといえる。印刷会社は紙離れというカンニバリズムを恐れる傾向があるので、どうしても電子書籍を促進する側にまわりにくいだろう。また印刷会社のノウハウはプリプレスだけでなく、最終商品として仕上げるところでの、文字の墨の濃度の均一さ、本の開き具合がよいとか、ノンブルが踊っていない、など印刷製本のところに多くあるが、こういった点は電子出版では関係なくなる。
ところが写植やデータ処理で編集をしていたところは、以前は紙の本のプリプレス工程だったので、最終製品を意識しないで仕事をしていたのが、スマホやタブレットがターゲットデバイスになると、自分たちがデータからeBook化したものが今度は最終商品になるので、商品に対する責任も変わってくる。だからプリプレス作業のような賃加工の考え方ではなく、最終商品としての価値を高めるつもりで仕事をしなければならない。しかしその分だけ出版社やコンテンツホルダに対して重要な立場で仕事ができるので、やりがいがあるはずだ。実際にはいままで出版物の最終商品からは遠いところにいたので、多くのハンディがあるのだろうが、そのことで紙の出版物をあまり意識しないビジネスにも入っていきやすいかもしれない。印刷物とのカニバリズムも気にしないでもよい。こういった会社の中から先進的な電子出版が出てくる可能性はある。
関連セミナー Androidアプリ制作の現状を学び、今後の可能性を探る 2011年8月24日(水)