投稿日: Sep 21, 2010 11:18:44 PM
ポジティブ思考で乗り切ろうと思う方へ
「FREE」で議論になったクリス・アンダーソンの「ウェブは死んだ」という論文がちょっと話題になった。「ちょっと」というのは、内容が非常に大きいテーマなので、この内容に反駁するにも時間がかかりそうだ、という意味である。「ウェブは死んだ」というタイトルは人々をこの議論に引き込もうとする挑発的な言い方なので、このタイトル自身を云々してもしょうがない。しかもウェブのことだけを議論しても仕方がない。この論文の内容は、決してWeb制作やWebビジネスの話ではなく、人々や企業のコミュニケーションにおいてWebが万能ではないという主旨であると思われるからである。その点からタイトルを言い換えるとすると、「Webは神ではない」くらいがいいんではないかと思う。
今日ではWebに関連した仕事をしている人の数が相当いるので、どうしても今の職業がどうなるのかという視点が強くなるが、そもそもそんな仕事はここ10数年以内に起こったことで、それまではデザイナだったりプログラマ、編集者、写植、通販……などなど別の肩書きで同様の仕事をしていた。たまたまここ10年強はHTMLベースのWebが急伸したので、そのままWebが全コミュニケーションを支配すると思った人が居たかもしれないが、少なくとも日本ではガラケーでのサービスがWebを越えるほどに普及したので、「Webは神」と思う人は居ないだろう。
アメリカは今iPhoneやスマートフォンの時代に入ったので、Webのオープンな世界から、キャリアに囲われた世界、またKindleなども含めて、Web以外のアプリの爆発的な普及期に入っている。日本はそれらの半分くらいをすでにガラパゴス的に担ってきたので、ことさら脱HTMLを重要なトレンドだと思わないのだろう。しかしクリス・アンダーソンの偉いところは、ガラパゴスがいいというのではなく、Webで失敗したことも、これらの他の方法でこれから実現していくという、イケイケドンドンのポジティブ思考をしている点である。また、そこには人々がお金を払ってもいいと考えるものは何かというテーマで、課金できることが増えることも含まれていて、なんとなく「FREE」のフォローもしているなと思わせる。
この論文はまだちゃんと読んでおらずに印象だけで書いているのだが、別にWebを否定しているものではなく、むしろWebを自己目的化する考え方を否定していると思う。だから課金しないオープンな世界としてのWebの役割というか、ビジネスになる世界と、それを取り巻く環境とを考え直すことを提起しているように思える。現在「ウェブは死んだ」を紹介・引用している例をみると、この論文にはいろいろなこじつけ的な記述もあるようで、あまり枝葉末梢な議論よりも、Webでうまくいかない部分にどうチャレンジして、新しいビジネスを作っていくかという議論にした方がいいと思う。
ちなみに、昨日、一般社団法人 メディア事業開発会議 という組織の登記を行った。今後、postmedia.jpというURLでやろうとしていることは、結構「ウェブは死んだ」論文と重なるように思える。本文を読まなくては…。