投稿日: Nov 17, 2011 11:45:23 PM
パッケージメディアもキュレーション次第と思う方へ
復刊ドットコムのことを、記事『電子書籍元年はなかったが…』で触れたが、通常のコミックよりも一桁高い結構高額のマニア向け復刊シリーズは、流通量はおそらく一般のコミックよりも1~2桁は下になるだろうが、需給のマッチングをちゃんとすると成り立つ。復刊はたくさん売ろうというよりも、ビジネスとしての成立点を絶えず見ながら交渉や設計をするものなので、見込み生産をする従来の出版とは姿勢が逆のものであると感じた。昨日の『日本のメディアビジネスは本当にダメなのか?』では出版もCDも作り過ぎた時代があったことを書いたが、その路線から抜け出るためにも冷静にもう一度みてみたい。復刊の高額シリーズは音楽で言えばボックスセットが似たようなものであろう。
作り過ぎに関しては上図に如実にあらわれている。レコードのピークが1980年頃であり、その7年後にはCD売上がその金額に追いつく。そのままCDは急上昇を続け、1998年のCDのピークにはレコードのピークの3倍にまでなっている。レコードは戦前から何十年もかかって1980年のピークになるのだが、その3倍のCDのピークはCDが出てから15年ほどで到達している。しかしその後10年でCD売上は半減した。とても人々がCDを聞く時間がレコードの3倍になるとは考えられないので、この間に聴かずに積まれたCDが増えたことと思われる。家庭内の楽曲の在庫過剰が起こり、それが業界の売上下降に反映し、また過去10年では不良在庫の山ができたのであろう。
その先にCDも適切なビジネスになる日がくるのであろうが、適切な企画や適切な流通は新たにチャレンジすべきテーマである。今CDに対して音楽配信の需要があるのは、レコード時代のテープの売上に匹敵するくらいになっていて、テープも音楽配信も携帯音楽プレーヤの需要である。この間に伸びてきた音楽配信はAmazonやGoogleも参入して戦国時代を迎えようとしているが、CDはそれとは別の道を歩むだろう。それは過去の音楽アーカイブからの再選曲・再編集という企画性のあるもので、いわゆるその道の専門家がキュレーションするようなパッケージになるはずだ。
しかもセールスポイントとしてはオールディーズ・ナツメロ分野が以前から通販としてセット販売されているように、過去の音源からの発掘や気の利いた企画(ただしマスセールスではなく十分なマーケティングが必要)が受けていて、マスメディアにも取り上げられることがある。知財権を死後70年にしようという動きも、単に音楽会社や出版社が有名人にすがって稼ぎたいというだけではなく、あまり有名でないクリエータでも過去から発掘すれば商品化の可能性が大いにあるからなのだろう。図書館のような広く参照できるアーカイブとは別に、キュレーションによる商品化の源泉としてのプライベートなアーカイブが整備されていくだろう。