投稿日: Apr 08, 2016 12:50:39 AM
ちょっと前に情報デザインという言葉が時々使われたことがある。これはちょうどWebの時代になって、印刷物など矩形の中におさめる静的なグラフィックデザインだけでは不足で、マンマシン・インタフェースのデザインが優れていないと、見た目が立派でも使ってもらえないからだ。だから限られた画面表示を有効に使って、情報をどのように区分けして、どのように見る人を誘導するか、を設計することが重要になった。これはスマホのように画面がさらに小さくなった今でも大きな課題である。
しかし考えてみると印刷物を作っていた昔から、情報の区分けとか、誘導というテーマはあって、むしろ画面とか映像のような動的な情報伝達が印刷では行えないがために、それを平面構成するグラフィックデザインが生まれたのだ。つまり表現の動的デザインというのは紙などの記録メディアが無い時代からあったコミュニケーション・デザインが、大量生産する紙メディアとか制約の多い電子メディアを使うようになって、何とか人間の自然な表現形態を様式化せざるを得なくて局部的に発達したのがグラフィックデザインであるともいえる。
デザインを独立した生業としておられる方は、webやケータイ・スマホになってデザイン領域を広げられたケースが多くあるのだが、印刷を生業としている方が電子メディアのデザインにどんどん進出していったイメージは無い。やはりデザイン専業の方が情報デザイン的な要素であるコミュニケーション・デザインにも馴染みやすかったのだろう。
とはいっても、実際のデザインの仕事が発注されるのは、発注者側で情報デザインが終わった後の段階からということは多く、デザイナが情報メディアの選択や使い方を決めることを任されることは少なく、デザイナが情報デザインをウリにすることには難しさがある。
では誰が情報デザインを手掛けるのがよいのかということになるが、基本は対人コミュニケーションをどうするかという課題であるとすると、セールストークと似たようなものとなる。それは今ではオフィスでもパワーポイントでプレゼンを作っていたりするが、そこらへんにネタはありそうだ。営業活動のようにフェースtoフェースでやっていることを、いかにWebやスマホやビデオなどの動的メディアを駆使して再現できるようにするかが今の情報デザインでもある。
プレゼンのパワーポイントを制作する際には、マーケティングデータとか製品・サービスの訴求ポイントなどの資料が用意されているはずなので、そこに関ってメディア戦略・戦術のお手伝いをするという立ち位置に誰が立てるのかということになる。
テレビコマーシャルなどをする大きい会社では広告代理店がメディアの選択や制作も任されているだろうが、大手代理店を経ないような仕事では、なかなか発注者のマーケティングや製品開発まで立ち入って企画提案をすることは少ないかもしれない。しかし紙メディアの四角いグラフィックデザインから脱して、動的メディアも設計できるコミュニケーションデザインを指向するには、顧客の懐に入って行くことは必須である。
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