投稿日: Jul 12, 2014 2:52:44 AM
本・音楽・映画・絵画などコンテンツに関する趣味嗜好が止むことはなく、タイトルをとっかえひっかえしながら一生の間にわたって人は何かしらを追い求めている。個人の遺品などがオークションにガサッとまとめて出ることがあるが、自分がその中の何かを欲するかどうかはともかく、「この人はどんなことに興味を持っていたのだろうか」という好奇心でじっくり眺めることもある。特にレコードは自分も一部屋埋まるほど集めてしまったので、同好の士の遺品に遭遇するといろいろな思いをめぐらすことがある。
同じ様なことは、古本屋・中古レコード屋・骨董品屋・リサイクルショップなどでもある。というか、そういうところこそが、また今日では遺品オークションも含めて、趣味人にとっては重要な情報源であるともいえる。ここにはコンテンツの相関がみられるからだ。相関というのはAmazonで、この本を買った人はこんな本も買っている、というのと同じことで、コンテンツにとっては重要な属性となっている。
コンテンツ自身も図書分類の書誌情報のようにメタデータの付与がされているにしても、実際に図書を探すのに書誌情報から自分の趣味嗜好にあったものを探すことは困難である。ダブリンコアのようなメタデータは図書の管理には役立ってもマーケティングには使えるものではない。
それに対して外部からニュートラルに評価された情報というのは存在しないわけで、だから求められているのがキュレーションであることになる。キュレーションを自動的にするような試みもあるが、本来のキュレータは超がつくほどの専門家で、その世界のことは何でも知っているような人を指すものなので、そもそも滅多に居ない人なのである。
その滅多に居ない真のキュレータのようなことを、クラウドソーシング的に人々のコンテンツに関するふるまいを分析したのが、いわゆるオススメ情報であるところのコンテンツ相関である。ネットでのオススメ情報は何らかの参考になるにしても、まだまだ不十分なわけで、それを補ってくれるのが冒頭の遺品のような先輩マニアたちがどのようなことをしていたのか、という情報である。
つまり、作品一点一点の評価や薀蓄とは別に、その作品は他のどういう作品と一緒にあったのか、という情報が役に立つのである。高名なjazz評論家が亡くなられたとして、その遺品のvintageレコード類を、彼はどのように分類して、また評価していたのかという情報が欲しいわけである。買ったけれどもあまり聞いていないレコードと、すり減るまで聞いたレコードでは、その人の思い入れは相当違うわけで、こういったことがオークションで観察できるのである。それを元にして、自分の知らなかったレコードでも聞いてみたいものが出てきたりする。
私は大学生のころからそういうレコードの買い方をしていて、いわゆる従来の音楽雑誌などから得られるような有名・無名とか高額・低額、またセールスランキングとは関係のない集め方をした。今欧米ではオークション結果だけを集めたサイトも充実してきて、どんな商品にどれだけビッドがあって、どんな値段がついたのかというのも割と調べやすい。ビッグデータの時代には、従来の音楽雑誌に変わるキュレーションがきっと興ってくると思う。
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