投稿日: Oct 17, 2012 12:25:51 AM
電子書籍を売るのは難しいと思う方へ
デジタルコンテンツをビジネスにしようという試みは1980年代からあり、データベースサービスやキャプテン(ビデオテックス)、パソコン通信、Webという流れの中で数限りない試みがされてきた。それらから言えることは、技術先行でデモを作って人を驚かせても継続的なビジネスにはならず、アミューズメントやエンタテイメントの1要素として採り入れられるに過ぎないことと、PayPerView的な課金のビジネス立ち上げはなかなか困難で、月額などの会費制である程度使い放題の方がビジネスになりやすいことだった。
前者のPayPerViewはデバイスの普及が不十分な段階からやったのでは成り立たないのは自明で、最近ではiPadの月刊誌という構想がそれにあたる。しかしデバイスさえ普及してしまえば、低額のPayPerViewがビジネスになることはケータイコンテンツで立証された。それがスマホ・タブレットに引き継がれない理由として、日本のケータイの垂直統合という特殊事情があることを記事『メディアビジネスの視点を変える時期』では触れている。またケータイの世界からオープンな世界に移った日本の電子書籍は、検索の際にもひっかからないことを記事『進化を続けるメディアサービス』で書いた。つまりネットの中でどうやって売るかという点で、知識不足、コラボ不足の状態が今であると思う。
冒頭の日本の電子出版30年の総括から、前職の最後の方から通販というのをいろいろ調べていくうちに、日本では出遅れていたが大きく育ったカタログ通販の分野に、BtoCのノウハウが溜まっているのを感じた。こういう会社は何十年も顧客名簿を元に、ニーズを捉えて新製品を提供している。それといつも新規顧客の獲得する工夫もしてきた。そしてそのやり方はWebの時代になっても色あせることなく、Amazonとも十分に戦っている。そんな中からネット時代の新しい通販会社も興ってきた。両方ともモバイル・スマホの時代に入るときからいろいろな新しいマーケティングテストを行っている。
おそらくこのやり方はデジタルコンテンツにも役立つだろうと思うし、現に通販専業者以外に、多くの製造業が直販部門を設けて似たことをしはじめている。通販に関しては日本通信販売協会(JADMA)という団体があるが、その会員企業は見る見る間に増えていって、印刷関連団体の縮小とは反比例のような状況になった。面白いことにアメリカの伝統的なカタログ通販大手はネットの時代になって撤退してしまったのに、日本は印刷カタログは減らしつつも、紙とネットとのバランスを上手に加減してビジネスを伸ばしている。この点も日本の方が上手にビジネスができているところだと思う。しかし電子出版をしている方にネット通販の話をしてもなかなか乗ってもらえない。
変化を乗り切ろうとする小売業と出版業の間に何かビジネスマインドのズレがあるように思える。