投稿日: Oct 26, 2011 12:16:2 AM
脱DTPのマルチメディアを考えている方へ
Blogへの音声・映像の貼りこみや、YouTube投稿も初音ミクも、中学生でも日常的に行っている割には、マルチメディアのオーサリングソフトというのは安くて簡単にできるものが見つからない。今はWebがマルチメディアの主体であるので、いろんな素材をリンクすると、実質的にはマルチメディアになってしまうから、中途半端なマルチメディアCMS程度のものは求められないのだろう。またHTML5のような新しい規格がこれから実装されようとしているので、まだまだ毎年実現可能な機能が変わっていって、それに伴ってブラウザも変化し続けるだろうから、オーサリングソフトをパッケージとして出すのは当面難しいだろう。
2010年にiPadの登場に合わせて、マルチメディア雑誌のサンプルがたくさん作られた。それらの新鮮で魅力的な部分は多くが手作業でのプログラミングが必要であったと思われる。マルチメディアのビジュアルなiPad雑誌は継続ができなかったし、やはり雑誌の世界はAdobeCSで作ってePub出力をするような紙のアナロジーの世界に戻ってしまって、電子雑誌は特別に部数も伸ばすことができなかった。今まで発刊していた紙の雑誌の延長上に電子雑誌を置くのは間違いではないが、読者対象が同じなら紙の減少分を補う程度で、新分野開拓のような期待はできない。しかしマルチメディアを活かして冒険するには開発のリスクが大きいというのが現状だろう。
ビルゲイツがMicrosoftの会長を退いてからは、Officeのような統合的なコンセプトの商品作りはなくなり、マルチメディアのオーサリングが出てくる可能性はないし、Googleはクラウド上のサービスとしてHTML5対応の部分的なオーサリングをいろいろ出してくるだろうが、パッケージ媒体は考慮しないかもしれない。Amazonは新しいKindleの規格でHTML5に向かって最先端に立とうとしている。だからKindleのオーサリング用には何らかの環境を作るだろう。Appleは動画におけるFinalCutProのようなものをiPad・iPhoneのために用意するかと思ったが、その様子はない。結局パッケージ用はAdobeしかない。
このように見てくると、記事『eBookで蘇るパッケージメディア』で触れた、オープンエンドの Smart ePub の次期バージョン(11月?)で音や映像を貼ったりできるようになると、外部サイトへのリンクができることと合わせて、日本では最終的にどの程度になるかわからないが、MozillaのWOFF(WebOpenFontFormat)に対応するのでTrueType、OpenTypeの限定的な埋め込みができて、少なくとも欧文フォントに関してはデザイン上の自由度が非常に高まり、AdobeCSがないところでも使える簡易マルチメディアeBookオーサリングができるように思う。
要するに今はマルチメディアに関しては「ライオンは寝ている」状態なので、自力で工夫して世に出す機会は多い。そこに簡易なツールが早く出てきて、多くの人がチャレンジするようになると、紙のアナロジーを脱したeBookができるかもしれない。