投稿日: May 03, 2012 2:28:24 AM
ネット時代の店舗活用を考える方へ
昨年はアメリカで最も衰退した産業として新聞が話題になった。雇用の減少でもトップの分野であった。その理由はいくつもあるのだろうが、直接的には広告収入の減少で、ローカル新聞の主要広告主であるところの小売業の衰退が大きく響いていると考えられる。車は持ち直したみたいだが、やはり小売異変というものがネットの伸張とともに顕在化しはじめているのではないだろうか? 製造業の空洞化の先にはリアルな小売業空洞化があるのかもしれない。現に日本でも秋葉原に電車賃を使って小物を買いに行くよりもAmazonに注文した方が安上がりである。つまりネットの影響は経済全体に影響を与え始めていると思う。アメリカでeBookが売れるようになったのも、ECが日常化したところにeBookの販売機会が増えるとかEC購入の気安さがあったことは確かだろう。
ECの影響というのは、例えば新しい家電を買おうとしたときに、部屋における大きさかどうか、インテリアとしてどうか、どのメーカーがよいかなど、量販店に行って現物を見て品定めして、注文はネットで安いところを探すという行動形態に現れている。品揃えを多くしている量販店はメーカーのショウルームになっているわけで、実際にメーカーの人間に売り場を任せるような店舗設計もよく見かける。また自由時間にウィンドウショッピングをするという楽しみも昔からある。こういったリアル店舗の魅力が、そのまま売上げにはつながらない点が出てきたことはあまり注意を払われていないような気がする。
つまり店舗というのは美術館や博物館にも似たギャラリー効果もあるわけで、それは店作りやインテリアの工夫が積み重ねられたひとつの文化になっている場合もある。POPなところではドンキホーテもビレッジバンガードもギャラリー型店舗である。そして商品もギャラリーにふさわしくなるように変化する。たとえば大昔のレコードは円盤を茶封筒に入れただけのものであったのが、ジャケットという意匠におさまったものとなり、LPの時代は美術・デザインの競い合いのような状況もあった。そのなかで育ったカメラマン・アーチストも多く居た。本の装丁とかカバーや帯というのも店頭を飾るのにふさわしいように進んできた(それが必要かどうかは別として)。しかしAmazonなどECではギャラリー効果はイマイチになってしまい、そこにかけたコストはむなしくなる。
以上のことは、店舗側と商品を作る側それぞれにとって大きな課題で、店舗と経営の見直しが必要になることだと思う。つまり「手に入れる」というだけなら店舗なしでもできることだから、店舗に行く理由がなければ店舗は成り立たないし、店舗に行っても無料ギャラリーとして使われるだけなら経営は成り立たない。財布を開きたくなるギャラリーという視点での抜本的な見直しが求められよう。一方で「店舗に行かなくても」手に入る便宜というのも大きなビジネスチャンスとなっている。商品を作る側では、この両者は相反するものではなく、補完し合いかつ相乗効果にすることが課題である。そのために図書館などの公的な無料ギャラリーやネットでフリーの世界とうまく連動する枠組みも検討を要することになる。