投稿日: Jun 19, 2012 12:44:18 AM
イノベーションのジレンマを回避できるのかと思うか方へ
デジタルメディアをよい方向にするには、クリエイティビティ(C)、生産性(P)、品質(Q)をバランスよく上げていくことだと、
記事『eBookの市場拡大と進化』で書いた。これは有料で販売するコンテンツや販促用のキャッチーなメディアにとどまらず、すべてのコミュニケーションに関して言えることで、教育・学習用でも企業内文書でもマニュアルでも同じである。今電子書籍がEPUB3に向かっているが、その潮流でいろんなEPUB周りのビュアやツールが作られると、それは誰でもどこでも使えるように普及していくであろう。つまり人がコミュニケーションに使う文書類が「EPUBのようなもの」が中心になっていくだろう。
デジタルの文書類とWebと何が違うのかというのが問題だが、今でもPDFに用途があるようにパッケージ化されて文書管理ができやすいものと、Webのように絶えず変化し続けるフロー的なものの使い分けは、将来にわたってもずっと区別されているだろう。つまり、フロー的文書 → 編集 → パッケージ化 ということ段階を踏み、またそれらからの引用で、フロー的文書 → 編集…とスパイラルに発展していくのが情報の性質であって、見栄えのする文書を完成させてそこが行き止まりということにはならない。PDFは紙と同質の見栄えをもつという点では優れているが、再編集となると一般の人にはテキストのカット&ペーストくらいしかできない。
ところがEPUBはおそらくある程度の見栄えと、ある程度の再編修性を備えることで、現段階ではWordやPDFやWeb上の文書としてとりちらかっている世界を、スマホ・タブレットからデジタルテレビ・カーナビなどなどいろんなデバイスのビュア・リーダで読めるものにしていくことになるのだろう。だからうまくいけばWord文書を配布することはなくなって、Word類はあくまで編集ツールとかプリントのためのツールということになるはずだ。
しかしEPUBが混乱する要素ももっていて、それはEPUBにさまざまな機能を持ち込もうとすることである。つまりHTML5で出来ることをEPUBの規格として追加し続ければ、一見よくなっていくように見えても何時までもfixせずに、WordやPDFやWeb文書からEPUBに切り替えるタイミングがなくなってしまう。規格の普及のためには、技術的に枯れていくプロセスというのも必要だからだ。あまり最先端ばかりを追いかけていると、HTML5が発展していくことでEPUB以外のマルチメディア文書の規格が浮上して、EPUBがそれと無益な競争することにもなりかねない。今のうちから何のためのEPUBなのかを話し合っておくことは重要だろう。
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