投稿日: May 28, 2010 1:16:50 AM
電子書籍のバリューチェーンを考えている方へ
『電子出版の状況整理と無料経済の関係』セミナー#kix0521(要約PDFはhttp://bit.ly/b4rrPn)の4番手であるクロサカタツヤ氏は、ビジネスモデルというものについての基本と、今の成熟社会におけるメディアのビジネスの留意点を話した。ビジネスモデルはビジネスの要素をどう組み合わせるかであるが、今まではモデル自体の革新性よりも、商品・市場特性とのフィット感が重要で、またファイナンスの要素が大きかったのが、今はもっとイノベーションを反映させたり、商品と対価の多様化があるビジネスモデルが考えられているということだった。
イノベーションのひとつは中ヌキであろうがヌクだけで新たな価値は出ないだろうから、別の新しい中間者が登場する機会にもなる。新しい中間者は権利者の利益増大と利用者の利便性増大をアピールするのだろう。またソーシャルメディアに情報が出たり、そこで膨らんだりする『外部化』というトレンド、またライツ・信用という価値をどう扱うかなど、音楽が経験してきたことの先にある新たな環境変化に対応する電子書籍のビジネスモデルに取り組まなければならない。
というような要素をみても、今電子書籍で成功するビジネスモデルがどこかに転がっているわけではなく、自分は「多様性」の中で何を狙うのかを、オリジナルで考えるべきだ。電子書籍のビジネスをするというのは、ビジネスモデルのオリジナリティを作るということだろう。読者に受け入れられそうな組み合わせを考え、誰と組んでそのボトルネックを潰していくのか、である。
1番手のフリーの松島氏は、フリーの範囲を自分でコントロールすべきと言った。2番手の仲俣氏はコンテンツのデータベース化をするところとどう関わるのかを話した。3番手の歌田氏は既存のビジネスモデルの制約やしがらみを話した。電子書籍のフェーズ1は姿が見えてきたとはいっても、従来の紙の出版とは異なってビジネス主体が自分で選択しなければならない要素がいろいろある。紙の出版なら東販を通そうが日販を通そうがたいした違いはないが、デジタルコンテンツとなるとバリューチェーンが見えにくいので困惑する出版社が多くなるだろう。
#kix0521に 続く、2010年06月25日(金)のKixプレセミナー2 #kix0625 では、10年後のメディアビジネスに立ち向かうための心つもりができればいいなと願っている。まずそれがなければ知恵と根性をもってフェーズ1を乗り越えることはできないだろう。