投稿日: Nov 19, 2012 2:15:32 AM
ネットの仕組は未完成と思う方へ
iTunesを始めとするネット上での音楽ダウンロードが、何百万のコンテンツを持つようになり、確かに日常的に使われてはいるが、このビジネスや利用方法が将来も確実なものかどうかはわからない。自分の子供の行動を見ても有料のダウンロードは稀で、主体はTutayaのレンタルのようである。iTunesが過去の楽曲中心になるとビジネスの成長は鈍るはずだ。
ビデオ販売がDVDのようなパッケージメディアからネット配信になるといわれてからもだいぶ経つ。その一方でeBookはアメリカでポピュラーになり、クラウド型のユビキタス利用は音楽やビデオを追い越すように便利な使い方が出てきた。eBookは新刊のプロモーションも兼ねてデジタルファースト型になっていったが、iTunesはアーカイブのようになっていく可能性もある。
音楽の場合は最初からネットでヒットを狙うということはどの程度あるのだろうか。確かに最初にYouTubeに上げて短期間に多くの視聴を得ることは興っているが、YouTubeそのものはプロモーションだけでPVは販売には直結していない。ところが本の場合は話題になれば最初から何ドルは払ってもらえる。音楽では無料のラジオ・TVがYouTubeに置き換わっているのかもしれない。音楽もビデオもeBookも配信の仕組みは同じようなものであっても、それらのコンテンツが世に知られるようになるまでのプロセスつまりマーケティングの習慣と、どこに購入時点を設定するかという点ではそれぞれ異なっている。音楽は権利の縛りが多いせいかネット上での革新的なビジネスがまだ登場していないように思える。
クリスアンダーソンのフリーミアムは途中まで読んで止めてしまったのだが、総論では販促・営業のコストをフリーのサービスに振り分けるというのは賛成であるものの、では何パーセントの有料部分をどうやって確実にビジネスにするのかは書けないだろうと思ったからである。フリーミアムは世の風潮として、フリーでばら撒いているうちに収入の糸口が見つかるのではないか、という楽観主義をふりまいてしまった。アメリカはフリーの部分もデータセンタなどIT産業の売り上げにつながるものの日本を含め世界の大半はアメリカの客になるような仕組みである。だからフリーよりも先のステップこそ日本にとってはより重要なのである。
ネット上のビジネスの仕組みをみると、Kindleの自主出版であっても、出版物としての体を成す編集とか、売り上げの決済方法など、著者にとって面倒なことが多くあるので、AmazonやiTunesのような巨大プラットフォームサービスとは別に分野ごとのミドルウェア的なサービスが求められてくるだろう。例えばライブで非常に出来のよい録音が出来た際には、どこかにその音源を持ち込めばプロモーションや配信を受け持ってくれてレベニュシェアで支払われるとか、eBookならblogを再編集してくれるサービスとか、敷居が低くバリューチェーンを広くカバーし、有料化にうまくつなげていくサービスが出てこないと、新曲・新作が最初からネット上で出てくる時代にはならないのではないかと思う。
Mediverse+EBook2.0Forum 11月の研究会