投稿日: Mar 04, 2011 11:47:48 PM
情報にビジネス価値をつけたい方へ
欧米の出版社にはデジタルの波に乗れるところもあるのに、日本の出版ビジネスが怪しくなっている最大の差は、出版・コンテンツ云々以前に一般企業の経営水準に達していないことがある。だから他業への展開もできない。過去から滅びる産業はずっとあったが、その渦中の会社は業態を変えることで生き延びてきた。それが日本の出版ではできていない。つまり出版の再生には今日のビジネスをするならミニマムとして備えるべきことに着手すべきだ。欧米のそこそこの出版社では昔からパソコンやDTPを積極的に利用していたが、日本の出版社は自分でコンテンツを加工しなかったことがeBook時代には大きなハンディになっている。これは実は出版社に限らず、企業内のドキュメント・印刷物担当者、音楽や映像の情報をあつかうところ、放送・演劇など多くのコンテンツホルダは似たような状況にある。それが過去のコンテンツがデジタルメディアに生かせない、またネット上でのビジネスが進まない理由であろう。当然従来のアナログでのビジネスもすぐには無くなりはしないが経営改善の解がないところにきているので、デジタルでの業態も作ることが生き延びる道になっている。
従来のプロセスをやめる
出版なら印刷発注に付随する形でデータ入力・加工を依頼していたために、自社が権利を持つコンテンツのデータが手元にないことが多く、これで欧米や中国では新刊のeBook展開が進むのと反対の状況になった。自分でデータを持たないとデータの利用経験が少なく、実は自分たちで簡単にできることでも外注してしまっていることが多くある。
従来は印刷需要が多くあったので、印刷会社もサービスでデータ加工も引き受けやすかったが、印刷がしぼんでくると印刷会社のサービスも低下するとか、いちいち料金を取るように変わって、より状況は悪化した。つまりコンテンツのビジネスはそれにまつわるデータ管理とともにあると考えて、コンテンツホルダは管理や加工能力の持つことをミニマムにビジネスのプロセスを再構築する必要がある。
コンテンツをビジネス機会に
自分でデータを管理すると、コストが下がるだけではなく、商品化の機動力も著しく向上する。つまり商品を生み出す力を高めることが課題である。デジタル時代は印刷物のような固定的は成果物・商品を出し続けるのではなく、過去の電子出版をみても短命なデジタルメディアを綱渡りしながらビジネスをするので、多メディア展開やコンテンツの使いまわしが効率的にできるかどうかが経営に深く関わる。電子書籍でガラパゴスフォーマットよりもePubやHTML5に期待がかかるのは、こういう流動的な世界でビジネスをしなければならないからで、コンテンツホルダもそこに身を置く決意が必要である。
世の標準を知る
冒頭で一般企業の経営水準と言ったが、子供でも自然にパソコンを覚える時代なのに、出版はまだIT嫌いという偏見を持ったままのところがある。ITの話は最新技術というものではなく、人々のライフスタイルとかビジネスの手続きのように身近になっていることがわからないと、商品開発はできない。こういったエンドユーザのことや、欧米での先進例、またユビキタス化やクラウドのような技術環境が非常に敷居の低いものになっていることの再認識も必要である。これは堅くなった頭脳を耕すようなものだ。
切り開かれる状況
日本最大の書店がAmazonになってしまったようにネットショッピングは生活者にアプローチをするための良い手段であり、過去の流通ルートに縛られたビジネスからいろんな可能性をもたらせてくれるものである。データ加工や社内システムもASPやクラウドによって初期費用をかけないでも使える時代になり、大会社ではなくてもITベースのコンテンツビジネスは可能になった。実際にXMLでデータを使いまわす基盤はできているし、エンジン・ツールも身近になっているが、それが自分の武器であると認識するコンテンツホルダが少ないのが現状だ。
以上は単なる出発点で、実際の競争はデジタルデータをどれだけ再編集・加工してリッチにできるかにかかっている。例えばデジタルメディアでの活用のためにメタデータを付加するようなことは、どこかに外注できることではなく、コンテンツホルダの力量が発揮できる(試される)ところである。