投稿日: Jul 27, 2011 11:50:58 PM
DTP不要の時代が来るのかと思う方へ
現在の電子書籍が紙の印刷物のデータから派生させるような考え方であったのに対し、実際には大量に電子書籍を作るのに際しては文章モノも過去の印刷紙面からスキャン・OCRをして制作することがあり、電子書籍をこのような狭義にとらえると先細りになることを記事『電子出版に夢がもてますか?』で書いた。さらに将来的には電子出版は新たなアプリ作りに向かうことを記事『eBookの陰で忍び寄る脱DTP』で書いた。アプリ開発に際しては制作におけるデータ加工が必要になる。これはDTPと似ているようで根本的に異なるものとなる。
下図の上半分は従来の本作りのプロセスで電子書籍を作る考えで、交換ファイル形式の標準化などもこういったプロセスが今後とも続くことを前提にしている。それはギョーカイの役割分担を変えたくないという意識の元に電子書籍も考えているからだろう。しかし絶対にそのようには行かない。なぜなら電子書籍はiTuneStoreのようなダウンロード販売のECだからだ。生活者からすると音楽もビデオも「出版物」も同じような買われ方をする方が自然だ。つまり編集→制作→流通というバケツリレーのプロセスでビジネスをすることはなくなり、今日のEC型ビジネスプロセスで出版もするものに変わるだろう。
ではどうなるのかというと、すでにAmazonのKindleでも中国の電子書籍でも部分的には実現しているが、蓄積と出版準備と配信がクラウド上のアプリでつながるような作り方になって、そこから即配信がされるようなモデルになる。配信のところはWebのCMSをイメージするとわかりやすいだろう。つまり材料さえ揃えばいつでも成果物を取り出せる、朝日新聞デジタルが24時間配信と言っているようなオンデマンド出版になるともいえる。
今のAmazonはひとつの会社がデータセンタも持ってすべてを提供しているクローズドシステムである。だからこういったシステムを真似る事は不可能だと思う人が居るかもしれない。しかしこういったモデルは次第に複数社の協業とか、クラウド上のサービスの組み合わせによって、いろんな会社が実現可能な時代になりつつある。ストレージはすでに制作のコラボに使われている。ePubならクラウド上で作業できる。HTML5時代にはもっとグラフィカルな制作にも次第にクラウド上のツールが提供されるようになるだろう。発行管理などは基幹システムとして出版社が自分で用意しなければならないが、これもプラットホーム化したサービスになるかもしれない。
こういった出版においては、素材管理がもっとも重要で、オブジェクトごとにどのような扱われ方をするかをメタデータで記述しておいて、最後の整形・配信の段階で一挙に組み立てる「レイトバインド」の作り方に向かっている。だから最初に取り込んだデータを汎用の部品のように加工して格納することが制作の仕事の中心になる。部品をレイアウトするのは「編成」のところのテンプレートであって、ここから以降は自動的なプロセスになる。となるとDTPは部品作りのところにしか貢献しなくなる。従来のAdobeはサーバ型のモデルを発達させてこなかったが、これからの時代にどのようにビジネスモデルを変えようとしているのか注目される。