投稿日: Mar 16, 2015 12:54:11 AM
印刷とかプリントというのは、今日定義するとなると静的な表示技術ということかもしれない。デジタルプリントのイメージング方式がいろいろ開発されて、旧来の版を用いる印刷に置き換わっていくことは増えるが、それは以前から考えられていたよりはスローテンポである。その理由は、静的表示では単にイメージングすれば済むという用途はあまりなくて、表示状態の維持、あるいは表示の劣化という課題があるからだ。
今はオフセット印刷の色校正にもインクジェットプリンタは使われるが、色校正は非常に短期間に限られた場所でしか行われず、保存という問題はないからだ。保存が必要ならばインクにはいろいろな耐性が求められて、それに適うのはUVインクジェットのようなものとなって通常よりは高価になる。
印刷用紙そのものも印刷インキも時代とともに改良が加えられ、劣化は少なくなるようにできたのであって、デジタルでイメージング方式が考案されても、それにふさわしい用紙の表面加工とか耐性のあるインキの開発にはそれなりの年月がかかるので、IT開発の急なテンポでデジタル印刷が実用範囲を広げることはできなかったということだ。
今もっとも悩ましいのは電子写真のPODとインクジェットのPODが併存していて、たとえカラーマネジメントが完璧にされたとしても、両方の安いプリンタを対象にする場合は編集・制作がやりにくいということだ。どちらかだけとか、高級プリンタだけならなんとかなるが、どこでプリントしてもOKな汎用性のあるマスターデータは作り難い。
つまり印刷を集中処理するのではなく、ネットで配信した後で分散したプリント環境で必要時にプリントしてもらうということが以前考えられていたのだが、その場合は相当品質について大雑把に考えなければならない。プリンタメーカーからすると巨艦のプロダクションプリンタを販売したいから、デジタルでも集中処理をしてもらいことになるのだろうが、そういう指向ではネット化した環境にはぴったりこないものを感じる。
静的表示で非常にロバストなものを求められるのは屋外看板の世界であって、そこで使われるUVインクジェットなどが最も旧来の印刷に近いものであるのだが、それらは高解像度化とか安いプリンタにはなっていない。分散プリント環境という点で考えると、電子写真の複合機に対抗できるのはUVインクジェットの小型高速化なのかもしれない。つまりデジタルプリンタにもまだフロンティアは残っているように思える。
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