投稿日: Jun 29, 2012 12:33:52 AM
eBookに所有感がないことを活かせないかと思う方へ
電子出版で流通が変わる。書店が無くてネットで入手するようになる。それで単価が下がって、出版社の売り上げが下がると、印刷代のコストはかからないにしても、ビジネスとしてやっていけるのかという疑問を持つ人は多い。しかしモノとしての紙の本の束縛が無くなることで、今までできなかったような読者へのリーチが可能になるのかについての話が少ないように思う。しかしそのヒントとなるような話はいろいろある。
音楽の話ではジュークボックスのことを記事『コンテンツ流通のチャンネル多様性』『放送禁止でもヒットするアメリカ』『コンテンツの出世コース』『コンテンツを生み出す土壌』『コンテンツビジネスの多様性』など繰り返し書いているが、ジュークボックス自身が日本には馴染みが少ないかもしれない。日本のジュークボックス業者はゲームメーカーに変身してしまって音楽には力を入れなかったのかもしれない。しかし日本にはその代わりに有線放送の発達があった。両者の共通点はお店が月極めなどで業者にお金を払うもので、ジュークボックスは曲ごとに客が小銭を出すが、有線放送は飲み代に上乗せされていて、この延長上にカラオケのサービスが始まった。つまり音楽業界はレコードというパッケージ販売の後に、有料視聴とか、カラオケのライセンスビジネスまでサービスを広げていった。
このように考えるとマンガ喫茶はeBook化すると出版社の敵ではなく、その場所に限定されたサービスとしてeBook提供が有り得るだろう。ベーシックサービスとしては過去のアーカイブが読み放題で、モノによっては新作が低額有料とか、あるいは会員制度で有料も読めるとか、さらにそこで電子書籍を割引で購入できるなど、いろいろなサービスパターンが考えられる。コーヒーチェーンでWiFiでeBookを読めるサービスをしている例もある。駅などにある公衆無線LANサービス Wi2なら月額300いくらでインターネットにつなげられるが、こういった技術をベースにコンテンツサービスのビジネスは多様に考えられる。
有料サービス・無料サービスということとは別にこの仕掛けとしては、WiFiで接続する図書館のようなものである。これは実在の図書館に比べて桁違いに沢山出てくることになる。ジュークボックスのよいところは、その店のカラーに合わせたコンテンツのセットを置けることにあり、店としても装飾の一種のようになる。だから客商売の中で客が読書にその場所を使っている場合には、そこをコンテンツビジネスの場にする可能性が出てくる。もっともこれはeBookだけでなくAudio、Videoも含めたサービスになるであろうから、WiFiによって客商売がtsutaya化するともいえるかもしれない。
電子書店だけで従来よりも出版売り上げを伸ばすのは無理で、「所有」概念の乏しいeBookだからこそ、コンテンツを楽しむだけのサービスが発達するのではないだろうか。