投稿日: Oct 19, 2012 6:32:43 AM
人材の質を変えなければならないと思う方へ
昨年は子供が通っていた学校の先生の一部が派遣であることを知ってびっくりしたことがあった。すでにかつての専門職の領域の多くに、専門職を派遣する仕組みができあがっていて、DTPなども相当数が派遣オペレータになっている。当然IT関係も多くのプログラマが派遣である。こうなる理由は、人材不足の穴埋めが簡単にできないこととか、仕事に季節変動が大きくて、常時雇用できないなどさまざまであろうが、もう一方では学校や会社のような組織が人を一から教育しなくてもよいようになったという面もある。つまり人材育成は本人が取り組むだけの情報や教育・資格というのが充実してきたからともいえる。
DTPでいえば特殊な作業をしているのでなければ、Adobeソフトを使うくらいは誰でもほぼ同じになり、社内で教えることも次第になくなってしまう。逆に組織としては仕事を効率化とか高品質化する独自のノウハウをもつのであれば、社内で教育する必要が出てくる。印刷でもWebでも実現や制作の方法論などは検討する必要がなく、単に点数をこなすだけの仕事が主になったので派遣のオペレータが増えたのだろう。つまるところXMLやCSSの活用とか自動組版という取り組みができる分野が少なかったということにもなる。
しかし派遣オペレータで制作が済むようになると、今まで印刷会社が使っていた派遣オペレータが出版社サイドで作業するようにもできるわけで、事実印刷会社が出版社に派遣している例はあるし、そのやり方のほうがよっぽど効率がよくなることも多い。派遣依存の印刷会社にとってはこれからの時代はやりにくくなるかもしれない。しかしこれは要するに出版社自身が制作のコントロールを自分でする気があるかどうかの問題で、現実に日本では欧米のように出版社サイドでDTPをしていないことからすると、いくら環境が変わっても日本の出版社の多数は効率化を果たせずに疲弊を続けるだけかもしれない。
出版活動を活性化させるには、出版社サイドで制作プロセスを考えて管理するようにならなければならない。但し制作は短期間に大量にあるものが海外にアウトソーシングしているがごとく、ネットにつながる形で広域でコラボして行えるようになったので、逆にこれからは出版社で派遣オペレータを雇う必要もなくなり、出版社の役割はプロセス設計と進行管理や品質管理に集中していくことになるはずだ。大手以外にそういう指向の出版社がどれくらいあるのかと疑問に思う面はあるのだが、実はかつての情報誌の時代にはそういう会社が頭角を現していたように、今またデジタルコンテンツの時代にふさわしい会社が頭角を現すようになるのかもしれない。