投稿日: Jul 30, 2015 12:4:6 AM
東南アジアの諸国を中心にした技術援助を前職場では長年していた。私はたまに講師として海外のスクーリングに行くくらいではあったが、後にアジアフォーラムという集まりを各国もちまわりで行うことになった際に、日本が事務局を引き受けていて、そこでの企画検討には関った。今ユニコードでマルチリンガルになったとはいってもサポートされていないアジアの言語は多いし、サポートされていたとしてもフォントが不十分であったりする。各国内での文字コードとかインプットメソッドの基盤がまだできあがっていないからである。とりあえずMicrosoftOfficeに入っているものを使ってはいるものの、昔の活版での出版のレベルに到達していない国もある。
そういう問題が随所にあるので、アジア諸国が共通の問題に取り組む必要性はあるのだが、東アジアの現状は、中国と、その他の諸国、というように2つに分かれてしまっていることをアジアの人々の発言から感じた。日本からすると一つの事柄でも、対中国戦略と、対その他諸国戦略の2本立てを余儀なくされているのである。
これはロシアに対してECとかNatoがあるのと似ている点もあるのだが、中国以外の国々の足並みは揃わないので東アジアでの横のつながりは何も起こらない。冒頭のフォーラムの際に、日本が旗振りになるといろいろ勘ぐられるから、活動計画をなるべく他の国の自主的な話し合いに委ねていたことを記事『敗戦から学んだものは?』で書いた。しかし実際のところは日本の外交力は全然アジアでは問題にされないほど低かった。つまり日本に旗振りができるとは思われていなかったのである。日本はアメリカの代弁者にはなれてもアジア諸国の代弁者になってくれそうだとは考えられていないのである。
Natoというのは集団自衛だから、今日の日本の集団自衛の議論では、対中国のアジア諸国の集団自衛の話も出てもよさそうなものだが、日本人もアジア諸国の底上げのために一肌脱ごうと言いう議論は起こらない。それほど日本はアメリカを向いているということで、集団自衛もアメリカとの2国の議論しか出てこない。このことはアジアの人の信頼を失う要因にもなっている。
しかし実際の日本人はアジアでビジネスをしている人が多くいて、それらの人々はアジアの人々と共に幸せに暮らしたいと考えている。国際結婚も増えてきたが、ビジネス機会が増えればこれからもっとアジア諸国との結婚も増えるだろう。そうすると必然的にアジアの人々の平安のために何かしようという日本人も増えていくだろう。
つまり庶民が肌で感じるアジアとの連帯というのはすでに強まり続けてきているのだが、国策としては何のビジョンにもなっていなくて、アジアをまとめる外交力もない。アジアを見渡して日本の進むべき道を考え、外交的にいろいろ手を打つことはまだ足りていない。おそらく政府はやっているというだろうが、アジアの世論が呼応していないならやっていることにはならない。そこが外交下手であるわけで一番の問題であると思う。アジアの世論をみながら政策を考えることが必要だろう。
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