投稿日: Dec 15, 2011 12:49:7 AM
国内産業の再生を考える方へ
もう20年前になるのだがバブルの崩壊というのは需給関係の逆転でもあり、作れば売れるという見込みが成り立たなくなった転機である。その後の日本は次第に顧客視点とかマーケットインとか提案営業など、個別に考えることを重視するように変わってきた。しかしその成果がまだ出ているところは少ないだろう。提案営業とはいっても、大体は既存の商品やサービスをベースにして、顧客の現状の課題とのマッチングを考慮して提案しているに過ぎないのであって、自社の商品やサービスを作り直すところまでは行っていないからである。
つまり商品開発やサービス開発として何をするかというところまで考え直すとなると、経営を考え直すのと同じなので、この問題は既存のビジネスの改善ではなくパラダイム転換になる。ビジネスのゴールとして江戸時代的な家訓を持ち出すことが増えているように思えるのは、国内市場を対象にしていると伸びない中での持続可能なビジネスになるので、鎖国時代の経験が蘇ってきているのだろう。しかし実際には海外のイケイケ市場に進出した産業の方が金回りはよく、国内産業は提案する方も、される方も一皮向けないと本当にコラボレーションができないので、成果を出すには大変な努力が必要になる。
例えば顧客満足とか顧客視点といっても、皮相的に喜んで受け入れてもらえばよいのか、本当に必要なことを実現するのかというビジネスの到達点の問題がある。医者のように患者よりも立場が上で権威的に指示ができる場合には、苦い薬や辛い治療も受けさせられることはできるのだろうが、提案側が下手に出なければならない中で、顧客をあるべき方向に導くことはいくつもの関門がある。これを一企業なり一個人が背負うのは無理がある。ではどうするとこういったパラダイム転換が可能なのか。
医療では一般人も因習や迷信的な治療を絶って、科学的な医学知識を身に付けてもらわないと、嫌な思いを乗り越えて医者には行かないように、それぞれの分野で新たなパラダイムに向かっての情報を多くし、啓蒙するような土台が必要になり、今その典型がICTとか通信分野である。つまり学校でITの使い方を教えなくても日常的に民間に流布している情報によって、人々は各人が金を払ってでもコミュニケーションの道具を使うようになった。またエコとか食の安全なども啓蒙が広がっているといえる。だから風評騒ぎもあるので、今は風評を上回る説得力さえ持つことができれば提案が可能な分野が増える。
まとめると、パラダイム転換は、情報発信→啓蒙活動→調査・分析、といったサイクルが自然に行える土台が必要だと思える。例えばソーシャルメディアに関するニュースを発信する人々、セミナーやワークショップ・サービスサイトでの啓蒙、などが行われているが、日本は調査・分析がまだ弱い。それはクラウド・ビッグデータや統計の専門家の不足である。特にマーケティング系にソーシャルメディアを使おうとする広告の世界にそれは顕著である。まだ広告ビジネスがパラダイム転換するとは思っていないからだろう。