投稿日: Jan 27, 2011 12:2:58 AM
賢人も喧嘩せずだと思う方へ
記事『TVは何を得て、何を失うか』ではアナログTV放送終了を前にして、デジタル放送が見られるコンバータの提供よりも、新しいTVを買ってもらおうという動きがあることと、しかしデジタルに買い換えてもそれほどメリットがないことを書いた。このようなことが起こるのは、放送(特に民放)と広告と家電業界のシナジーが働いているからである。家電業界が無い国ではコンバータの普及で十分かもしれないし、その方が切替が素早くできるだろう。日本はシナジーが自分を縛るものになって、次第に変化への対応が遅くなってきた。
家電比べてパソコンの世界の方が国際的に参入が自由で、競争が激しくなる分だけ、あの手この手いろいろなものが開発され、TVの視聴に関してもアンダーグラウンドなものも出る代わりに、新しい使い方のアイディアもいっぱいある。先日、TV番組をネット転送するソニーの「ロケーションフリー」(今は生産中止)を永野商店に預けて有料で海外に転送するサービス「まねきTV」に最高裁で著作権侵害の認定があった。まねきTVは不特定多数相手ではなく、自分で買った機材で自分で選んだ番組を見ると言う点では家庭のDVDレコーダーと同じだが、テレビ局側は「送信可能化権」を侵害すると主張した。こんな訴訟をしているうちにロケーションフリーがなくても似たことは可能になった。
しかし実際には損をしている人は誰もいない。それが問題視されるのは、日本の放送関係者が決めた視聴スタイルをはみ出したものは許さないという姿勢があるからであろう。このようなステークホルダのシナジーが自己目的化してしまうことは、他にも多くあって、出版社・取次・書店とか、新聞社・販売店・キオスクなども似たものである。これらに対していろんな批判もあるが、外野からとやかく言わなくても彼らはすでに「自分の頭を堅くしてしまった」という報いを受けている。そういった人は無視していいだろう。
既存メディアの多くが変化を嫌って、生活者から見てつまらなくなってしまって、市場を半分失うであろう今の期間こそが、新しいサービスや製品を立ち上げるべき期間でもある。既存メディアとは喧嘩をしてもラチがあかないので、そっとしておいて、その一方で彼らが自己変革でカバーできないであろう弱点をしっかりつかむことがチャンスにつながる。