投稿日: Feb 24, 2011 10:20:7 PM
2大メディアの復権は難しいと思う方へ
2月24日に、国内最大級の動画サイト「ニコニコ動画」を運営する株式会社ニワンゴ代表取締役社長杉本誠司氏を招いて、既存メディアとネットメディアの立場や定義、関係などを話し合った。参加者は事前に週刊ダイヤモンド2011年1月15日号の「特集:新聞・テレビ勝者なき消耗戦」を読んできてもらって、最初に杉本氏がコメントし、続いてニコニコ動画の取り組みを説明し、参加者とディスカッションを行った。新旧メディアの対比に関しては多くの記事や本があるにも関わらず、今回は実際に面と向かって折衝をしている当事者の感覚が伺える貴重な機会であった。結論から言うと、既存メディアで決定権のある人のリテラシ欠如により、会話にならないとか折り合いがつかない、説得ができないことが多々あるようだ。
週刊ダイヤモンドの記事の背景として、新聞やTVという2大メディアの人には危機感はあっても、業界の体質や構造が時代への対応を妨げているという指摘があった。永らく自由競争が少ない業界であるとか、大企業の垂直統合型モデルであることのデメリットなどが、昨今のデジタルメディアの興隆の中ではことごとく裏目に出てきた。例えばネットでTVのコンテンツがみられるようなオンデマンド型のサービスも増えたが、画面がPCになっただけで、生活者が何を求めているかとはすれ違っている。2大メディアの人のメンタリティとしては、自分たちが提供しているものはいいはずだという前提なので、そう評価してくれる人を対象にしていて、この循環関係が年とともにシュリンクしている。既存メディアの対象が高齢化して減少しているのに、情報提供側は変わらないので需給バランスが崩れて、経営的に瀬戸際まで追い込まれている。
実は週刊ダイヤモンドの記事には、国内の100万~200万ユーザのVODサービスは採り上げられていても、2000万近いニコニコ動画が採り上げられていないというギャップもあり、これは雑誌の編集者もわかっていないし、また週刊ダイヤモンドの読者もわかっていないことが起こっていることを表わしている。ニコニコ動画の中心利用者は20歳代で、それに10歳代と30歳代が続く。そこで話題にされる内容が2大メディアの人には理解できないものになっているからだ。2大メディアはニコニコ生放送に関しても政治家が出るようなものは採り上げられても、ニコニコ動画の中心部分は話題にしてもらえない。その典型はコミケで盛り上がっているような分野で、それはコミック・アニメだけでなく音楽も大きく育っていて、10代にとってはTVのアイドルと同等に扱われるとか、カラオケの上位に並ぶほどになっている。つまり2大メディアだけを見ていてはわからない膨大な情報需要がネットでは提供されているようになった。
しかもニコニコ動画は動画投稿に対してコメント投稿ができて、それをみんなで見るソーシャルなところが、マスメディア系の動画とは根本的に異なるところで、ソーシャルな体験や、つながり、ひろがりのような双方向性を活かしたサービス開発は2大メディアにはできないので、将来はネット上のソーシャルなプラットホームの上に既存メディアのコンテンツも載せるような分業を想定している話があった。具体的に新聞やTVとのコラボ例の取り組みも話された。しかしこういった従来のプロのコンテンツと個人のコンテンツがソーシャルなプラットホーム上には並ぶ時代になるのである。杉本氏は個人ジャーナリズムの話もされていたが、前述のコミケのパワーを考えると、ニコニコ動画のファンが今後創り出すであろうコンテンツと、縮小均衡の2大メディアのコンテンツの勝負は、実は見えている気がする。ニコニコ動画のコラボ姿勢は、金持ち喧嘩せず、というところか。