投稿日: Sep 02, 2012 11:57:43 PM
広告ビジネスの再構築はあるかと思う方へ
記事『広告の価値と値段(1)』では、旧来広告はまず媒体ありきで「高い着目率」のところに高い値段をつけるメカニズムが働いていたが。今ITでやっていることは、ネットビジネスでもリアル店舗でも「高い成約率」をシミュレーションするようにビジネスを解析するサービスが先決で、その結果しだいで広告戦略が決まる方向になりつつあることを書いた。典型的なのは検索エンジンのリスティング広告で業務の関連性の強いキーワードに紐づいた形で広告展開が考えられる。つまり以前は先に広告枠を決めてからクリエイティブをしていたのが、生活者の関心の動線に沿う形で広告を配置しなければならなくなったのである。
一般に広告代理店に代表される業務というのは、2つに大別でき、媒体側に立つ広告スペースを売るという「メディアブローカー」と、クライアントの広告出稿の代理業務である。前者はメディアの代理店なので全方位に営業をするが、後者はクライアントの広義のマーケティング業務にあたり、広告企画クリエイティブだけでなく商品企画にも関与するので、代理店とはいえ1業種1社の顧客に限るのが欧米の姿である。日本は両者の組み合わせであって、うまいビジネスではあるものの、どちらかに振り切るわけにはいかないという点では中途半端にならざるを得ない。顧客のコンペティタを潰すとか買収して消してしまうようなことはできない。穏やかにいっても、比較広告はほとんど出来ない。
日本のは新聞の発行部数が大きく代理店も強気の時代には、全国紙は上場企業の広告しか扱わないなど売り手市場であったが、今はパチンコでも金満財布でもどんな広告もとるようになり、ブランドイメージを上げるために全国紙に広告を出すメリットはなくなってしまった。TVの広告も同様に変質してきたが、今までの広告ビジネスの発達の中で、上記2要素は入り組んだ最適化をしてきたために、冒頭のIT時代に合わせた広告展開にするために、従来のビジネスを解きほぐして別のデジタルのモデルに組み替えるのは時間がかかるだろう。
Webの広告でもコンバージョンとかエンゲージメントとかいろいろ言い換えながらITで新しい広告モデルがあるようなことはいろいろ言われたし、今もクラウド/ビッグデータで解析するとこんな可能性があるというような能書きは増えるのだが、それらを従来の広告販売のパッケージに組み込んだところで効果は見られない。確かにインターネット関係の広告はいろいろ工夫をしているので売上げは増えていくが、それらが大きな利益をもたらすという段階ではない。
よくAmazonやeBayが引き合いに出されるが、ビッグデータの解析をしただけでは販売にはつながらないで、ネット上のビジネスなら利用者がそのページを開いている短時間の間に解析結果から最適のお勧めを提示するような処理をしなければならない。単に利用者の属性やビヘイビア、商品特性について静的な情報があるだけでは広告にならないし、例え広告ページとかバナーが押された時も、利用者の属性やビヘイビア、商品特性を瞬時に処理して何らかの新鮮な情報を出さなければ、紙媒体と同様にいつも同じ情報が出るだけのデジタル広告はすぐ消されて、利用者は別のところに移ってしまう。
デジタル放送でもスマートTVでも広告の仕掛けは出来ていないのだし、大手代理店がデジタル広告を営業して歩く時代はまだ先だろう。それまではGoogleが検索エンジンの広告化をしたように、IT系のところからリアルタイムでオンデマンドなゲリラ的な広告サービスが出てくる時代が続くだろう。