投稿日: May 23, 2015 1:2:15 AM
ラジオができてからは音楽番組でいつも何かしら聞こえてくるようになり、お店に行けばBGM、テレビの映像のバックにも音楽が流れるように、音楽というものは生活の中に入り込んでいる。またセレモニーには節目に音楽でメリハリをつける。こういったことの原型は民俗音楽にあるのだろう。民俗音楽はほとんどレコードのような情報媒体とは無縁の世界で、口承で伝わっているので地域ごとにバリエーションがあり、なかなかどこが本家本元かわからないし、知財の権利問題というのも関係ない世界である。
もうひとつの音楽の相は、突出したミュージシャンが人気を博するとか、広域に誰にでも知られるようになるなど
「大ヒット」が起こることで、レコードや放送など情報媒体の発達でそれらがさらに加速した。過去に評判になったものが定番化して一流(とかクラッシック)とされ、聴きつがれるようなことが起こる。現代人の生活のBGMの多くはこういうものである。
つまり、音楽の様相は、
A:民俗音楽、民衆音楽
B:有名一流
の2つある。
一般に人々がレコードとして入手するものは、主にBであって、特に洋楽ではレコードが中心になるのは仕方ない。Aは環境に備わった音楽で、そこに住む者が対象であり、その共同体以外には広まらない。これはどこにでもあり、例えば「はないちもんめ」「かごめかごめ」「ひらいた ひらいた」「むすんでひらいて」などはある年齢層に留まるだろうし、また地域的なバリエーションもあり、それは他地域には波及しないだろう。
しかしアメリカの黒人音楽というのは、「A:民俗音楽」でありながら、「B:有名一流」にもなるものがあるという特質をもつ。つまり奴隷解放後の人種差別の中の閉じた黒人共同体音楽は、その後100年かけて少しづつBになっていったのである。
2015年5月14日にB.B.Kingは89歳で亡くなったが、そのニュースは瞬時に世界を駆け巡り、同時に生前ジャズメンとセッションしている映像、ロックスターとセッションしている映像、その他数多くの思い出映像がYouTubeにアップロードされた。その中に黒人ブルースマンの特徴として刑務所慰問ビデオも数多くアップロードされた。ブルースの歌詞は刑務所とは縁が深いということもあるが、それも含めてブルースマンはAの黒人共同体に居るので、受刑者向けの選曲がうまくできているなあと思った。ブルースはAとBの中間にあるともいえるだろう。
冒頭の写真は1972年にBBキングやジョーンバエズ他何人かがニューヨークの刑務所でコンサートした時のもので、DVDでも発売されている。
最初はAの民衆音楽であったアメリカ黒人音楽のうちで最初に非黒人に理解されたのがJazzで、その後R&Bやsoulが知られるようになり、その後にBluesもある程度は非黒人に広まったというのが歴史的な経緯であるが、Bluesはそれ以前に広まったJazzやSoulよりも黒人共同体との結びつきが強く、そのことが非黒人に広まることの限界にもなっている。
さらに黒人教会のGospelはまだ殆ど解明されていないし、アメリカ黒人共同体音楽は外部からはうかがい知れない部分が残っている。音楽はBだけではないということも黒人音楽を聴いていて思うことである。
それらもYouTubeのおかげでぼんやりとは全体像が見えてきつつあるのが今日である。
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