投稿日: Mar 11, 2015 1:19:56 AM
雑誌広告はこの10年で半減したが、金額的に見るとテレビ広告も同額ほどは減っている。新聞広告もプロモーションも減っているわけで、インターネット広告が増えたといっても他の減少分を補うことはできずに、総量はあまり変わらない。大きく落ちたのは3.11東日本大震災の後なのだが、それ以降の広告の回復は思うようにはいっていない。
広告は予算削減の中で最初に手を付けるところでもあり、また事業が順調な年には決算月に税金対策で出稿されることもある。つまり業績の反映の現れるところなので、広告ビジネスの金額推移を純然たる広告分野の出来事と考えても意味がない。
広告は受動的な産業であって、広告業界が頑張ってインターネットやスマホの普及に貢献したわけではない。テレビの初期の時代は広告代理店が広告ベースで番組を作ったことがあるが、今のインターネットのアプリはゲームでもSNSでも広告代理店が考えたわけではない。SEO対策でもGoogleが検索アルゴリズムを変えると広告のクリックは増減してしまうように、受け身でITにぶら下がってビジネスをしているだけだから、これから先の広告産業のビジョンと言うのは自分たちで作れないのではないかと思う。
アドテックという言葉があって、ネットのプレーヤーや利用者の間に入り込んでなんらかのビジネスをする仕組みを構築しようというのを聞くと、ちょうどPrintOnDemand、personalize、OneToOneマーケティング、など20年ほど前くらいにデジタル印刷で可能になるといわれていたダイレクトマーケティングやプロモーションの仕組みを思い出す。
プリントにおけるpersonalizeは明細書とかトランザクション、通信教育の個別学習など定着した分野はあるものの、マーケティングを変えるものにはならなかった。その理由のひとつは個人情報を勝手にハンドリングできなくなったからであるが、それはそのままネットの広告にも当てはまろうとしている。
Amazon、eBayとか、日本では楽天、Yahooのような、自分のデータセンターで顧客情報を処理しているようなところは、情報を社外に出すことなくpersonalizeなプロモーションが可能になるが、それは広告代理店の関与するものではない。一方Tポイントのようないろんな企業に使われるものは顧客情報が扱いにくくなっているので、これも広告代理店が組んで広告メディアとして活用するのは難しいだろう。
現在のところインターネット広告はバナーのような画面の中の一定スペースに課金する方法よりも、運用型広告という1クリックあたり幾らという方法の方が上回るようになって、従来の広告代理店が押えていた有限の空間や時間枠による商売とは全く異質なものとなろうとしている。
過去に広告代理店がやっていたスペースの希少性に値段をつけるやり方は、ネットではポータルサイトやECサイト自身がやり始めているので、広告代理店は不動産と同じく仲介業でしかなくなってしまった。むしろ広告代理店の役割はコンテンツ作りに重きを置くことになるはずだと思う。
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