投稿日: Nov 03, 2012 1:1:18 AM
ビジョンが重要だと思う方へ
これからどんな会社がITの覇者になるかを考える時に、マイクロソフトが勝ち進んでいた時のことを思い出す。つまりマイクロソフトはこの世界でもっとも敵も多かった会社で、OS開発会社はもとより、アプリケーションソフトでも市販のパッケージソフトを潰していったのだから、どんどん敵が増えてしまう。ビルゲイツはそのところをよく考えていたと思う。Windows3の次期開発はUnixに負かされたDECの開発者を引き抜いて行わせたのはリベンジというモチベーションを使ったようにも思える。だからWindowsに負かされた人がリベンシしないような政策をとっていた。
マイクロソフトはいったいどれだけの会社を買収しただろうか。結局世界中にWindowsを売って儲かった金を、規模の小さいに同業者にばら撒いたのと同じようなことをした。つまりマイクロソフトの方向と何らか抵触しそうなベンチャーなどがあると、その技術を必要としているようなふりをして買収し、会社として伸びる芽をつんでしまう行為ともいえる。悪い言い方をすると次々とベンチャーを喰らって、将来敵にならないようにしていた。こういった会社を潰す理由は、Windowsのライバル会社が買収して対抗力を強めないようにということもあっただろう。
昔ばなし : AdobeがPostScriptのType1フォントのフォーマットを公開しないで、PostScriptプリンタで使えるフォントを専売していた時に、多くの人は多様なフォントがPostScriptで使えるか、あるいはPostScriptの互換製品が自由に使えるか、という状態を望んでいたので、珍しいことにAppleとマイクロソフトが共同してAdobeに対抗することになった。
Appleはアウトラインフォントの技術の会社を買収して自由に使えるフォントフォーマットであるTrueTypeを発表した、マイクロソフトの分担はPostScript互換RIPをパソコンで使えるようにすることで、やはりそういった開発会社を買収したのだが、結局ソフトRIPを製品として出すことはなかった。その時ビルゲイツは他社の互換品をマイクロソフトが出すことを認めなかったのである。
つまりAppleに対しては不義理をした。それはAppleがPostScript互換に手を出さないようにさせるためだったのかもしれない。その代わりマイクロソフトはAdobeには接近した。AdobeがライセンスしたEfiなどのソフトRIPがPCを始めいろんなプラットフォームで使える時代になった。
もっともAppleが分担したTrueTypeは真っ先にWindowsで使えるようになったのは皮肉でもある。このことを通じてAdobeはType1フォーマットを公開するとともに、後にPostScriptでTrueTypeも使えるようにしたので、結局フォントは基本的には誰でも参入できるようになった。この件についてはAdobe、Appleよりもビルゲイツのビジョンの方が勝っていたといえる。
ビルゲイツはRIPやフォントフォーマットの仕様が少々異なったとしても、その差でビジネスが伸びるとか伸びないという問題はなく、やはり利用者・提供者両方を見渡して広く普及することを第一にしたので、この判断は間違っていなかったと思うが、その影ではフォントフォーマットや専用RIPでビジネスしようとしていた多くのベンチャーを潰した。しかし歴史から見ればそれらの会社にビジネスを伸ばすチャンスはいずれにせよ無かったであろう。
今も金の集められるAppleやGoogleは戦略戦術のいろいろな思惑もあって多くのベンチャーを買収し続けている。やはり単一技術をベースにしたベンチャーは、大きなビジョンを持ち、戦略に長けた、ポリシーのしっかりした会社にはかなわないだろう。