投稿日: Apr 11, 2014 12:28:23 AM
密林のような配線が減った
スマホの類はまだ分解して中を見たことがないのだが、携帯音楽プレーヤにしても小さくなってしまったものは、中に込みいた配線があまりなくなってしまって、見てもつまらない。パソコンのマザーボードだって小さくなって、ICの数も減って、鑑賞する価値は減っている。これは日本のエレクトロニクス産業の行き止まりを象徴しているように思える。
パソコンパーツも同様で、やはり不要になったHDDやCD/DVDもプリント基盤を取り出して眺めるのだが、こうもシンプルになってしまうと、大量生産される電子機器の製造が日本では低付加価値過ぎてやってられないのは如実にわかる。アジアでの組み立て作業に先回りする形で、CADで外注を極限まで減らすようにアメリカが変化していったのは正解だった。そしてその後を追うように台湾の電子機器組立会社がCAD化を進めて、システム・オン・チップ(SOC)では日本を凌ぐようになってきたし、サムソンなどのスマホビジネスも同様である。
日本は不思議なことにTVなどアナログ回路のシステム化シリコン化は熱心だったのに、ことデジタルのシステムLSIとなるとCADレベルでも相当遅れをとっているように思える。それはCPU開発が盛んでないことからも伺える。CPUはある面では枯れた世界なのかもしれないが、3Dゲームなど発達させたGPUのようにバス幅の拡張とかワード長を増やすとか、コア数を増やすとか、いまだに効率化に向けた試みがされている分野なのだが、日本ではゲームCPU以外にはこれといった動きが無いのではないか。
私は学生時代に電話局内配線とか通信機・電子機器の組立のバイトをしていたことを記事『マイコン前夜』で書いたが、無数とも思える配線がびっしり詰まった光景には圧倒されていた。電話局では室内いたるところが、通信機ではラックの背面が(今でもデータセンタに行くとラックの裏側が同じ様な光景でうれしいのだが)、ジャングルのようになっていて、これは突然できたことではなく、機器が増加していくにしたがって込み入ってきたものだ。つまり「これ以上は配線できません」というところまで電子機器は増殖していくものなのである。
その先にどうなるのか? 別の方法論にたたなければ前には進まなくなる。それがSOCなどでもあるわけだが、そこに行くには一度は配線の飽和のところまで進まなければならない。今のデータセンターがそこに向かっている途上で、この先にデータセンターはどう化けるのかが見ものである。
ひるがえって日本の弱体化はGPUやSOCやデータセンタのような飽和に向かうことを避けてしまったことにあるように思える。まあフロンティア精神の欠落と言っていまえば、それまでなのだが…。