投稿日: May 23, 2013 1:28:54 AM
コミュニケーションのリストラ
大学は何千何万人のコミュニティで、その中がいろいろな専門分野に分かれるということで、コンテンツ市場としては上限がはっきりしていて、大衆的な商業出版とはビジネスを成立させるモデルが異なり、コストをペイさせることが難しい。しかし逆手にとって、必要部数を一定コスト以下で提供するモデルを作るという発想ならeBookとかデジタル化に取り組む意味は大きい。記事『出版界をバイパスして』では、何らかの新しいコミュニティのムーブメントがあるところで、新しいメディアが出版印刷の分野を迂回して、自主流通できる自主出版というものになろうとしていることを書いた。これは一般化すると直販化ともいえる。
日本で企業のリストラというと即人員削減を意味してしまうが、ストラクチャを変えるという目的ならば、コミュニケーションを変えることで会議・意思決定・連絡など組織内のいろいろなオーバーヘッドの削減も可能にできる。メールの利用以来、グループウェアとか情報共有という点で組織における人のつながりかたを改善する試みがあったが、私の知る限り日本の一般的な企業でドラスティックに取り組んだところは非常にすくなく、メール連絡どまりである。
ネットではSNSやスライドシェアや会議連絡などの無料のサービスが個々に存在するが、これらがオフィスワークの変化を示していると思う。当然ながらシステムで実現可能なことは限りがあり、会議の招集や出欠・資料準備・進行・決議事項連絡・後日の参照などパターン化できる業務をIT化することで事務の仕事が削減できる。これが人減らしにつながることもあれば、そうでなくても人は減らないが雑務が減ることにつながる。
これは次第に組織内から他の組織との交流にも及んでくる。特に日本は流通機構が何重にもあって複雑で、それらがすべてコストに上乗せされていた。その中間流通を省くことで生産者と利用者がWinWinになる構図は30年間ほど前から提唱されていたものの、生産者と利用者を結ぶシステムとその運用について良い解がなかったのが、農産物の産直のようにWebやモバイルで簡単に実現するようになった。これが消費財だけでなく産業資材や生産財の流通にも応用されようとしている。これを進めるには、産直なら農協をバイパスしなければならないように、半官半民とか第三セクター的な何々センターとか業界団体を頭越しのビジネスを覚悟しなければならない。
林業や漁業などで海外の製品に比べて国産のコストが高すぎてビジネス化できなかったようなものでも、中間流通コストや営業にかかわるコストを激減させられれば、競争力が復活するものはいろいろあるようだ。TPPが避けられないのなら、コミュニケーションのリストラを優先的にすべきではないだろうか。