投稿日: May 18, 2011 10:42:4 PM
既存メディアの変革は難しいと思う方へ
アメリカのジャーナリズムに詳しいメディア・パブにアメリカデジタル新聞発行数が載っていたが、紙の新聞ほど伸びず、新聞社のプレゼンスはネット上では大きくはできなかったことがうかがえる。これは別記事『米国のニュースサイト、新聞サイトはトップ10に3サイト』にもあるように、ネット上では新興のニュースサイトが活躍するようになったからである。中でも注目を集めたのがHuffPostで、6位に食い込んでいるし、記事『メディアの大変革が進行中』で書いたように、紙メディアと十分対抗できるものが登場したことは、マスメディアの20世紀とは時代が変わっていることを物語っている。
日本では毎日新聞がネット関係では頑張っているし、最近はNHKの速報がネット上ではイイ感じになって、ネットでのニュースも新しい風が吹きそうな気配であった。そんなタイミングに朝日新聞デジタルの登場であったので、一瞬期待してしまったのだが、その紹介記事をみて拍子抜けしてしまった。基本的にはasahi.comと大して違わないようにみえて、それで有料であるという。最も気を使ったのはiPadなどにおける見栄えだったのかもしれない。
がっかりした点というのは、0年代後半からのネットの潮流というのが何も反映していないことで、 http://www.huffingtonpost.com/ を見ると、政治が強く出ているなど新聞のポリシーが伺えることが第一にあり、記事は記者(外部契約)が顔写真入りで出ていて、記事には読者のコメントがいっぱいついていて、また記事にfacebook・twitterへのコネクト、友達にemailや「いいね」の数などが表示されるのが、ほぼないことである。つまり上から下への一方通行のマスメディアの姿勢は崩さないというわけだ。おそらくこういったことを朝日新聞デジタルにぶつけたら、コメントや「いいね」ボタンくらいはすぐできるが意味無い、といわれるだろう。
つまりソーシャルメディアが可能な時代になったのだからジャーナリズムに関する考え方も変わって当然だと思う。これから既存メディアがソーシャルに向かうのと、ソーシャルメディアがジャーナリズム化するのと、どちらが先に進むかという競争になるのではないか。そして朝日新聞デジタルが示したものは、決して既存メディアが優位ではないだろうということである。実際にはHuffPost に投稿しているのは元は紙の新聞の記者なのでプロの仕事ではあって、「クリエータの民族大移動」が起こっている。ニュースが世に出るまでのプロセスはボトムアップ型になりつつあり、そのうちfacebookのようなところにフリージャーナリストが集まって新聞のようなものをネットで発行するようになるかもしれない。