投稿日: Oct 27, 2010 10:10:29 PM
TVの価値はどこにあるかと思う方へ
プロ野球のTV中継になかなかスポンサーがつかないで、地上波で見られる機会が減っている。CSだけでなく日本シリーズでも全部は地上波で放映されない。これは野球人気のせいもあろうが、TV放映料が高すぎるからだろう。結果的に日本シリーズの放映料は昨年の5億いくらから2億円も下がったという。それでも3億いくらを上回るCM料がとれるのだろうが、TV局の収入は半減している可能性はある。今年はTV広告は持ち直したとは言うものの、その要因としてITメディア関連の広告が一番伸びているということは、その広告効果が出ればITメディアのビジネスの方がTVよりもさらに伸びるということでもあり、敵に塩を送るような広告ビジネスになっている。
ネットの利用者にとっては、自分の都合のよい時間に見ることが出来るYouTubeでプロ野球も見ることが出来るのが望ましいが、今は放映権がTVに専有されているので、ネットでは新聞のスポーツ欄程度の情報しか見ることができない。Webの世界で動画視聴が伸びているとはいえ、このようになかなかキラーコンテンツがネットには行かないようになっている。しかし視聴者にとってはパソコンで地デジを見る事だって、デジタル録画をパソコンで見ることだって自由なので、形式上はTV放送しかやっていないとしても、視聴者のライフスタイルとしては「パソコンで観る」ことは確実に増えていく。
つまりTVの視聴時間がデジタルメディアに奪われていくことは歯止めがかからない。AppleTVやGoogleTVはそうした背景から出てきているが、記事『動画の新時代が見え始めた』で書いたように、まだ本格普及には何か足りないものがあり、焦点が定まっていないように見える。アメリカのTVは動画サイトを自分達でやっているし、イギリスのBBCも自身のアーカイブ以外にYouTubeにもいろんな映像を提供していて、これらは日本のNHKも後追いしている。BBCなどギャグ映像も多く、単にTVの宣伝のためにネットメディアを使うというよりも、もっとYouTubeの世界に入り込んでいるかのように思わせられる。しかしネットに背を向けているTV局もかなりある。
つまりYouTubeを積極活用しているところは、ネットの世界に自分達のコンテンツの質を見せつけることを狙っていて、その先に何らかのネットに対応したビジネスモデルを模索しているだろう。しかしネットで評判を得られないコンテンツであったなら、電波でダメになったらどこでもビジネスは成り立たない。TVが野球とかスポーツの人気頼み、タレントの人気頼み、のような他人にコンテンツを依存していて、自分で何も産み出していないなら、面白いところだけをつまみ食いされるようになる。今のデジタル録画で、面白いところだけ観る視聴習慣の広まりは、TVのチャンネルとしてのブランド価値を下げてしまう。
放送免許にあぐらをかいた商売になって、制作を外部に丸投げして独自コンテンツが出来にくくなってしまうことが、TVをダメにしているのではないか。独自コンテンツがウリになっていれば、媒体が増えていくことはプラスになるはずではないか。