投稿日: Jan 10, 2013 2:12:14 AM
零細・SOHOの時代が来ると思う方へ
アメリカのレコードや音楽関係のことを時々書いているが、それは自分の趣味であるとともに、20世紀のメディアの歴史のひとコマであり、その発達史が21世紀の今のデジタルメディアの試行錯誤や今後の見通しの参考になると思うことがしばしばあるからだ。レコードは20世紀初頭の発明物で、音盤材料、録音、再生という技術は大メーカーが投資して改良し普及させた。それに伴ってRCAやコロンビアその他メジャーな会社が機器とコンテンツの両方をビジネスにした。第2次大戦までこの分野は、インディーズとか小ベンチャーはわずかしか居なかったし、その役割も大きくはなかった。しかし第2次大戦後は機器もコンテンツも多様化してインディーズとか小ベンチャーの活躍の場は広がっていった。
アメ リカではphonographと呼んでたが、ヨーロッパはgramophoneと呼んだりして、両者の間に質の高い競争があった。戦後はアメリカ内でもRCAなどの独壇場ではなくなるし、世界的には日本の音響メーカーも打って出るようになった。日本はそれまでの真空管の名器に代わるトランジスタを使った高級オーディオで先行したので、その勢いでさまざまな音響機器ベンチャーが世界に出て行った。しかしコンテンツに関しては日本はインディーズ化が非常に遅れて、大メーカー系の音楽産業がレコードを牛耳る時代が続き、今に至っている。つまりアメリカは大メーカー系に負けないくらいのインディーズの活躍があったのとは対照的だった。
アメリカではコンテンツに関してもRCAを始めメジャーが落ちぶれたわけではないが、メジャーが手をださなかった分野をインディーズが担うことで、コンテンツの多様化が非常に進んだのである。ビジネスとしてはメジャーとインディーズが競い合ってよい勝負をしていたと思う。メジャーが著名アーチストと契約をするのに対して、インディーズは誰でも参入できてピンキリというか玉石混淆なものである。しかしだからこそ発掘できる新しい金の卵が多いことにもなる。新人がインディーズでヒットが出るとメジャーと契約するようになる。これは役割分担のようなもので、いつもインディーズはサブカル的で、それが面白い人が担っているし、聴衆もそれを期待している。
こういったインディーズの活躍は、地域や音楽ジャンルごとにJukeBoxでどのくらい再生されたか、ラジオでどのくらいかけられたか、など数値的に常時モニタされるデータをマーケティングやプロモーションに活かせたからで、こういったマーケティングサポートの業界紙とか調査会社、サンプル盤の配布会社などが生じたことが、レコードの自主流通を可能にして いた。一般には今週のTop100というような形で業界紙のヒットチャートが紹介されるが、実際にはもっと細かい流通実態の情報がビジネスの基礎になっている。こういった方法は別にレコードに限らず、書籍雑誌でも似たような仕組みがある。サブカルもリアルタイムに販売データさえとれるようになれば、ビジネス化のチャンスは増えるだろうし、それ以上に効率的に新人発掘できて、市場が盛り上がることが期待できる。コンテンツが大企業に牛耳られずにインディーズ化して多様化することは発展の成り行きだろう。
eBookというのは物流がないので自主流通という言い方もできないし、自主出版といっても実態はコーディングでパッケージングしたというだけで、ネットに置くだけでは出版行為にはなっていない。つまりネットにおける出版は再定義する必要がある。単純に考えるとプロモーション行為が出版に相当するのだろう。レコードにおいてインディーズは自主流通するために日常活動としてプロモーションをしていたわけだから、eBookも盛り上がりを求めるならばAmazonに預けるだけではなくプロモーション活動が伴わないと自分のブランドとか自分を中心にしたコミュニティは出来上がっていかないだろう。