投稿日: Jan 24, 2013 1:5:29 AM
紙の需要にどう応えようかと思う方へ
インプレスR&Dが開発して自家使用してきたEPUBやPDFを生成する Next Publishing Platform のセミナーがJEPAで開催されて、その資料がサイトにあがっている。インプレスの前身であるASCIIの時代から独自にTeXの組版を開発していたので、その組版やタグ処理のノウハウをEPUBとPDFに使うようになったということだろう。これを使った出版物は昨年中ごろから14点ほど発売されていて、制作から販売の経験が溜まったので、このシステムをどういう方向で展開していくかも固まりつつあるようだ。当然ながら一つの原稿でEPUBによる電子書籍とPDFによる紙の本が同時できることで、出版社に制作の負荷を増やさずに二つの市場でビジネスできるようにするものである。
電子書籍のサイトや配信サービスは沢山あるが、どこもEPUBでの入稿ができるようになったので、流通の敷居は低くなっているが、インプレスR&Dは電子書籍ストアliburaPROという配信のサービスも始めていて、すでに10社ほどがここを経由して電子書籍を販売している。ここにもいろいろな特徴があるのだが、それは省いて今回の発表のインパクトとして話題になっているのが電子書籍ではなくプリントオンデマンドによるBookOnDemandなのである。
このセミナーの資料を見ると同じタイトルで電子書籍とBoDの発売部数比較も出ていて、やはり紙の本の方が1桁たくさん売れるのである。このデータの中心は日本でのAmazonKindle前であったろうから、これからあとでは電子書籍の出方も異なるであろうが、今の状況では紙の本を出さないことは大きな機会損失になってしまう出版社は多くあるはずだ。そこで小部数出版ならBoDで何とかしたいと考えるのだが、当然ながらオフセット印刷に比べると1冊あたりのコストはかなり割高にになってしまう。
従来BoDがなかなか離陸しないのは、ごく小部数ではオフセット印刷よりもコストメリットが出るとしても、そこまでの制作費が同じようにかかるから、あえてBoDに切り替える必要がなかったからだ。この Next Publishing Platform であれアンテナハウスのCAS-UBであれ、原稿から直接EPUBやPDFを生成するので、いわゆるInDesignによるページ製作を行わない。これは昔で言うと組版代になるわけで、それがどれくらい出版のイニシャルコストに関わるかも資料が出ていて、何とコストの半分を占め、500部くらいの印刷よりも高くつくというデータがあった。つまりプリプレスの外注をやめて、編集部で Next Publishing Platform やアンテナハウスのCAS-UBを使えばイニシャルコストは半減し、そこにBoDにかけるコストも吸収できるというのが、インプレスR&Dの説明であったし、実際に14点ほど出版してみて、数百部規模のBoDで利益が出るという。
これらはもっともで、要するに小規模出版ならAdobe製品を使わなくてもよい方法ならまだやっていけるという話になってしまう。マニュアルなどはWordで作られているので小部数BoDは行われていたが、Wordでも組版を外注するとコストはかかってしまう。しかしマニュアルではライティングからWordで行っているのでプリプレスコストはかからなかった。商業出版でもNext Publishing Platform やCAS-UBが扱える編集者が求められるだろう。