投稿日: Mar 07, 2012 12:28:4 AM
ネットメディアは風評には勝てないのかと思う方へ
東関東大震災からもうすぐ1年ということで、TVをつけると過去のニュースやその後のルポが報じられている。その中で今朝も被災者が「放射能がうつるのじゃないかと思われる」不安を語っていた。この1年間毎日何度も放射能何シーベルト・ベクレルということを人々は耳にしたはずだが、その結果としての放射性物質の理解がこの程度ということは、メディアは風評は広められても正しい理解は広められないのではないかとも思える。日本は広島長崎の被爆経験がある国で、世界の中では最も放射能のことを人々が知っているはずなのに、60年以上も経っているのでその時にもあった風評による苦労と対応が風化してしまったのだろう。
昔原爆被害者に対して放射能がうつるという差別が行われた。まだ放射能の人体への影響がわからない時代だったからだ。また直接原爆投下の影響を受けなくて、その後に他地域で生まれた人でも、残留放射能の影響を受けて、何らかの障害が出ることや、地域による癌の発生率なども次第に明らかになっていった。特にチェルノブイリの原発事故ではその後のデータが克明に取られたので、それらと日本の原爆後の放射能被害との照合でいろいろなことがわかってきた。例えば自然界に存在する放射能には影響されにくくても、ウランの核分裂後に生成されるセシウムなどの放射能が少量でも影響が大きいことなどである。
つまり放射能云々について調べようと思えばいろいろな情報があって、それが文献としてネットで見られるものもあるし、Blogにも書かれているので、探し回わって情報を吟味すればこれからどうすべきかを考える手立てはある。しかしそんな面倒くさい情報はマスコミ向けではないし、官庁・行政側も原子力行政に掉さすような専門家は遠ざけたままなので、マスコミで公平に情報の検証をするようにはなっていない。以前なら雑誌メディアの力が大きかったので、そこでまとまった情報を世に出すことができたのが、今のネットは情報が断片的すぎてまとまった意見を表現しにくいようにも思える。むしろ断片的な情報は風評に結びつきやすく、結局いろいろな研究やデータがあっても60年前と同じでように風評に押し流されている現状がある。
どうしてジャーナリストでも研究者でも教育者でも公的サービスでも、いろいろ出てくるデジタルメディアを有効に使うことがなかなかできないのだろうか? PCやケータイの普及量と情報を取り扱う能力は別であって、人が機器普及に追従できないデジタルデバイドとは反対に、機器は使えても情報をコントロールできないのが現状のようだ。これはキュレーションとか編集とかいろいろな言い方がされる能力であるが、新たなデバイスに期待をかけるよりも以前に、それぞれ自分の使命を明確にすることが重要だろう。
また今回の震災の記録としてはビデオやモバイルの動画が非常に多い。それらは今後の復興の施策にも啓蒙にとっても貴重な資料となるので、Google Mapのような位置情報、日時の情報などのメタデータをつけてまとまったアーカイブ化が必要であろう。