投稿日: Jul 04, 2012 12:2:43 AM
新しい関係を模索している方へ
電子出版EXPOが始まる。開催に合わせていろいろなリリースが出ていて、これは実際に出かけてみなければわからないことではあるが、それほど目新しいものは無いように思える。はっきり言って新デバイスに謁見するのに電車賃を払って出かけるのは バカバカしいくらいだ。この種の展示会は日経のEP展とか1980年代末からあり、それらを賑わしたテーマのほとんどはすでにわれわれの日常に取り込まれているが、唯一残ったのがeBookであるともいえる。つまりアナログコンテンツの最後の砦が本であり、そこもデジタルベースに変わろうという時代である。
電子出版EXPOの主催者は同時開催で第2回ライセンシングジャパン、第1回クリエイターEXPO東京、という展示会があり、これら3つの関連をよく考えてみるのが、今後にどんな変化があるかを考えるのに役立つだろう。つまり出版で言うところの制作以降販売に至るところはあまりビジネス課題ではなくなり、いろんな企業が切磋琢磨して新しい何かが生まれるというものではなくなる。言い方を変えると制作以降を改善してビジネスが伸びる可能性が低いと主催者は見ているに違いない。実際に出版社にとってはAmazonでもKoboでも流通は何でもよくて、どれだけさばけるか、マージンをどれだけとられるか、だけが問題であり、消費者にとっても購入の仕方が判らないという障壁があるわけでもない。
ビジネスとしての競争は制作の前段階である企画やコンテンツの獲得にあるだろうというのが、ライセンシングジャパン&クリエイターEXPO東京を同時開催する意図ではなかろうか。ここがアナログの時代からどのように変わるのであろうか? 今出版業界が著作隣接権を何とか獲得したいという動きがあることが、その変化をあらわしている。従来は出版社が事実上印刷物を作る工程を押さえていて、紙の手配から製本まで垂直に管理していたので、著者が世に本を出すには出版社にすがるしかなかったのが、eBookでは著者の自主制作の道が拓けてくるとか、また編集者であっても独立して出版プロジェクトを動かすことができるからである。
つまりデジタルとネットワークの中で制作から流通まで行われることで、コンテンツのクリエイトと、プロデューサでもある編集/出版と、プラットフォームである制作・流通の関係がバラバラであってもコラボレーションしてパブリッシングが可能になる。Koboはカナダの会社のままで日本語のコンテンツを日本に提供する。こういった出版旧体制の崩壊を少しでも食い止めたいために著作隣接権で何とかならないかと考える人もいる。しかしそれは時代への逆行で、本質的にはクリエータ・プロデューサ・プラットフォームそれぞれのWin-Winとなるような新しい体制を考えなければ、皆が閉塞状態になってしまうからだ。
自分の立場だけを考えてバリューチェーン全体を考えない人は、結局はバリューチェーンからはずされてしまうだろう。
電子出版再構築研究会 名称:オープン・パブリッシング・フォーラム Ebook2.0 Forumと共同開催
関連情報
出版のグローバル化を考えるセッションを行います。 7月6日(金) 15:00-16:30(90分)