投稿日: Jun 30, 2011 10:30:50 PM
コンテンツは死蔵されていると思う方へ
コンテンツという呼び名は経産省の部署の名前にもなり、一定の認知は得られたようでもあるが、従来のメディアビジネスの人からは慕われていない言葉である。しかし知財権的に言うと原作から作品までひっくるめて呼ぶ言葉が他になかったのだろう。つまりデータを編集して表現するまでの全体がコンテンツである。ITの時代においてメディア制作を自動化・半自動化しようとすると、編集とはアプリケーションであり、表現とはプレゼンテーションである。これは三層アーキテクチャの、データ層、アプリケーション層(編集)、プレゼンテーション層(表現)に対応していることに気がつく。つまりコンテンツという言い方は若干疑問が残るとしても、メディアビジネスを今日のITのアーキテクチャに当てはめて考える際には、まあまあであるといえる。
ではIT時代になってコンテンツビジネスは過去と何が違うのか?コストダウンとかスピードアップはわかりやすいが、それだけか? 記事『データをサービスに変えるビジネス』ではクラウド時代なのにコンテンツが活かされていないことを書いたが、例えばどのようなことがこれから先に考えられるのかわかりにくいと思うので、野球の試合で考えてみよう。野球は2時間30分くらい試合をしていて、それをTV放映(映像)しているが、それを録画して最初からそのまま見る人はどれくらいいるのだろうか?終わった試合はダイジェストで見るのが普通だろう。もう一方ではネット速報(データ)というのもある。これはスポーツ新聞をクリックすると詳細が辿れるようなツクリになっている。
両者は権利問題もあってなかなか一体にはならないが、ネット速報に動画が出てくるとか、TV放映を自動的にダイジェストするような、あわせて処理するサービスを人は望むであろう。つまり試合を見ながらネットに出している情報や、アナウンサーが大声を出すところをハイライトとしてマークするとか、なんらか記録を動画につけていくならば、後で得点シーンだけでなく、見所、ダイジェスト、過去対戦の資料映像などの派生コンテンツやサービスというのが縦横にできるようになる。現在はデジタル録画にTVanytimeのようなメタデータ化がされたりしても、またネット速報でも、独自のやり方をしているので、横断的に処理をすることはできないのだが、検索エンジンがWebサイトをクロールしてリポジトリを整理しているようなことを、各分野で誰かがするようになるかもしれない。あるいは業界の何々MLが作られるかもしれない。
出版やマニュアルのデジタル化は、まだデジタル保存というアーカイブにとどまっているものが多い。これは野球で言うとTV録画そのままのような状態なので、コンテンツの活用は難しく死蔵に近いものである。小説ならその記述を細分化して舞台背景の場所や年代やテーマなどをタグとして入れるとかすると、紀行文と合わせてGPS連動で呼び出すとか、別の文脈に露出させる/使ってもらう可能性は出てくる。過去のコンテンツをビジネスシーンに蘇らせるには、もう一度コンテンツホルダ側の意欲と努力が必要なのである。