投稿日: Feb 28, 2013 12:31:40 AM
多様性を求める方へ
もうマスメディアはいらないよね、とか、TVよりもネットの方が面白いよね、という声がある。これは今我々の目前にあるマスメディアやTVその他旧来メディアそのものの限界をいっているのではなく、要するに既存メディアの内部疲労で面白いコンテンツを作れなくなっている現象を指しているだけのことで、pull型のデジタルメディアと、push型のマスメディアの比較の話ではない。私はもう厭き厭きしているのだが、過去30年間にわたって、アナログ対デジタルの話は、既存プレーヤー対オルタナティブ(パーソナルメディアやヲタク・マニア向けコンテンツの類)のように混乱して話されてきたし、今もそうである。
NHKから「デジタル時代の新しいテレビ視聴(テレビ60年)調査」(2013年2月)というのが出ていて、TV視聴について分析されている。またこれに関してGarbagenews『「もっとも有益」は多方面でテレビ、ただし「面白いもの探し」ではパソコンが逆転』 http://lb.to/15Rkaz8 という記事もある。両方を見ていて思ったのだが、コンテンツを「ニュース」「楽しむ」「安らぎ」「感動」「外とのつながり」「面白いものを探す」というように分けており、こういう分類の分析は自分の感覚とは遠いと感じた。この分類は企画編集の際のコンセプトのようなもので、どんなメディアによって伝えるかとは関係がない。確かにDVDでニュースを伝えるのには無理があるとは思うが、あるメディアをどのように使ってもらおうかというのはビジネスモデルの話である。
つまりこの調査は現状でどうなっているかという既存メディアの立ち位置を示しているわけで、ネット系メディアとの比較に使うのはヘンである。例えば「面白いものを探す」という点ではチャンネル数が3桁になったCATV・衛星TV・ネットTVは、本来はそういうコンテンツの多様性の世界を提供しようとしていたものであったのに、そのようには機能していないことが問題である。これら3桁チャンネルの中には実際には面白いコンテンツはあるが、それを人々に知ってもらう工夫をしていないので、限られた人しか見てもらえないのである。
NHKの放送のうちに自社番組の宣伝がどの程度を占めるのか知らないが、それらの多くは特定のドラマやドキュメンタリーのために行われていて、少なくとも多様性を背景に「面白いものを探す」という視点で視聴者に接していることはないのだから、「面白いものを探す」のがネット系の機能になるのは当然である。従来のマスメディアの人々はチャンネル数が片手ほどしかなく、週間のプログラムが暗記できる程度のビジネスしか考えていなのは、基本は視聴率を数~十数%稼がなければならないという呪縛の中で仕事をしているからだ。多様性は本当は眼中にないのだろう。
しかし人々はスーパーにも行けば専門店にも行くわけで、みんなが見ていて話題にする番組も見れば、誰ともコミュニケーションせずに自分だけが楽しむ番組も見るのだから、プライベートな多様性の世界が充実していくのは自然である。だからTVでも園芸の番組をどこかでやるだけでなく、園芸のチャンネルがあったらいいなと考えて技術的には3桁チャンネルにしたのだろうが、ビジネスが追いついていないのである。