投稿日: Jul 06, 2011 10:52:44 PM
広告予算に代わるものを考えている方へ
広告と出版は全く異なるビジネスであるが、今日的にはかつての主軸であった「流通」という中間プロセスで稼ぐことが難しくなるという共通性がある。ネットワークとコミュニケーションのデジタル化によって、「中抜き」がされるというのは製造業であっても商業であっても同じであるが、さらに広告や出版という情報サービスでも同様の様相を示すようになったといえる。本来の情報サービスは中間プロセスで稼ぐことが目的ではなく、ソリューションとかクリエイティブな価値を認めてもらうはずのものであったが、利益という点ではウマ味があるのは、数えられる世界の拡大であって、それが現在の会社を支えている言ってもよい。
フィリップコトラー「マーケティング10の大罪」は企業の戦略推進役のはずのマーケティング部門が4Pのうちの1P(プロモーション)しか行っていないことを嘆いているが、実際ネットの利用が多くなるにつれて、人の目に触れるのはどんどんプロモーションに比重が行く。そしてGrouponのような共同購入クーポンも広告やプロモーションの予算の行く先になってきた。お店の側からするとクーポンは別枠で資金を用意しなくても製品やサービスを原価提供すれば人目を引くことができるので、導入しやすいプロモーションである。しかし、そのクーポンがどのような点で人目をひいているのかが重要で、単に割引率とかお得感しか感じてもらえないならリピートにつながらないかもしれない。バーゲンハンターを対象にするのではなく、クーポンをきっかけに商品の魅力をどうアピールするかが本来は必要なはずで、それはクーポン会社に相談しても何ともならないだろう。なぜ広告が必要であったかが忘れられているのかもしれない。
メディアはDM、Web、ケータイ、メルマガ、OOH、と個別メディアが増える一方だが、それぞれのプロモーションを扱う業者の細分化された費用の中では、じっくりと広告コミュニケーションを考えるとか取り組むことはできない。もともとお店の販促予算はいくらもないので、そういったメディアから広告の問題にアプローチすることは難しいが、敷居の低いプロモーションは中毒に陥りやすく、そこから脱却するためにも、広告でなくてもあらゆる顧客コミュニケーションをマーケティングのつもりで行う必要があるだろう。広告でなくても広告の意味が出るものは多くある。
では広告会社はというと、クーポンのようなドブ板営業をするよりも、媒体の代理をするメディアレップとして、着目率の高い上澄みのおいしい部分の扱いでビジネスをするようになっているので、中小クライアントはなかなか相手にしてもらえない。もっとも代理店の中には通販業界に特化して広告主の側に立っていろんなメディアの組み合わせを考えてくれるところもある。つまり細分化されたプロモーションに対してどのように広告の提案ができるかというと、なんらか共通の業種・業態ごとのモデルを作り、それに対して各店舗は自分で工夫する余地があるようにするとか、別途費用で面倒見てもらうことになるのだろう。この別途費用も成果報酬というような料金徴収にすれば、広告の業務領域は広がるはずなのに。