投稿日: Feb 08, 2014 2:1:45 AM
ライフスタイルの経済化
クールジャパン機構と呼ばれる「株式会社海外需要開拓支援機構」の専務の話があった。政府が500億円出資し、民間が75億円を出資して、クールジャパンビジネスに出資するファンドである。ファンドなので出資してもらったお金は返さなければならない。
クールジャパンというと我々はすぐにアニメやゲームなどのサブカルを思い浮かべるが、この機構ではクリエイティブ産業というくくりで捉えていて、その中には下表のような産業が含まれる。
日本国内ではこれらクリエイティブ産業の総額は64兆円ほどあって590万人が就労していて、自動車産業をしのぐほどであるのだが、世界的な貿易でみると日本は圧倒的に輸入超過で、唯一ゲームだけが世界で圧倒的に強い。圧倒的に日本が負けているのはファッションで、これは欧米のブランド品が強いからである。これは仕方がないと思うか、もっと何とかすべきと思うか、もっと国内で議論をすべきであろう。日本人の意識としては日本よりもアメリカの方が魅力的だと思っているかもしれない。
ヨーロッパでの日本の評価は、アメリカよりも日本がクリエイティブであるという調査があり、日本の魅力をビジネスに変えることの支援をするのがクールジャパン機構である。日本の製造業の海外展開は以前からあったが日本のクリエイティブ企業が海外展開をするには情報不足やリスクが高く、ビジネスはやりにくかったので、この機構がファンドをするとはいっても出資だけではなく、個別のコンサルティングのようなことをして支援・育成するのが目的であるという。
またこういう文化的な分野は評価を得るには時間がかかるものもあるために、一般の何々機構よりも長期の活動をするようで、存続期間を概ね20年と想定している。
ここでいうクリエイティブ産業云々は、言い換えるとライフスタイルに関連した支出であり、嗜好的感覚的でありながら継続・波及するものであるといえる。ひとつひとつのビジネスは単発で収支にあくせくしなければならないにしても、日本の文化を世界に好んでもらうための戦略というのが大事なる。それはまだ明確ではないようにみえる。
ただ上の表にはないが、世界のクリエイティブ産業の説明の中では、メディアコンテンツの15倍ほど「食・飲料等」の産業があり、そのうち世界文化遺産にもなった日本食の評価が高まっていることも含めて、日本ライフスタイルをベースにした輸出の可能性を考えている。それと直接関係しているのが「観光」で、日本を訪れた人の評価が高いこと、とくに食に関しては高いので、クールジャパン戦略は、世界に日本ブームを起こし、現地で稼ぎ、最終目標としては日本に来て消費してもらうことであるという。
つまり、一般にクールジャパン云々がサブカル輸出と思われているのとは反対に、歴史とともにある自然な日本のライフスタイルを世界の中に位置付けて、差異を知ってもらってファン化するような文化政策である。これはフランスはむかしから、イギリスも1990年代から展開しているのと似ていて、アドホックなものではなく、もし政府が本気でやるというのなら日本のすべての文化事業に関係してくるものともいえる。