投稿日: Jan 04, 2014 2:35:32 AM
アナログの方が便利だったのだが‥
私が大学生の時に夏期などの長期休暇の際は通信機の組み立てのアルバイトをしていた。某大メーカーの下請け工場で、当時伸び盛りだった通信衛星の基地局とか、新幹線の制御用コンソールなど、一品製作のものを組み立てていた。プリント基板の部分は別途作られてくるのだが、電源やプリント基板のモジュール間の配線(ハーネスという)とか、操作するボタン類とディスプレイ周りは手作りになる。それも大量生産品ではないので、付線表や配線図を見ながらの作業となる。同時にちゃんと配線できたかどうかのチェックも作業としてあって、社内で検証してから、親会社のチェックを受ける。
今のサーバーのラックのようなものにモジュールのユニットを取り付けていって、バックに電源線や信号線のコネクタをつなぐハーネスがある。通信機器はアナログ回路なので、電源線とはいってもがっちりシールドした線で、シールド線も太く、その中に対撚りの太い線が入っていて、シールドの末端処理だけでも大変手間のかかるものであった。それ以上に手間のかかるのは配線の変更である。奥の方にある線をひとつはずすには、手前の線を何本もはずさなければならなくなる。これはミスが起こった場合とは限らず、アナログ回路では線のとりまわしをかえてみることが時々あるからである。だから将来の変更に備えた配線をしなければならないし、作業の方法論というのが必要になって、それがノウハウなのだろう。
制御用コンソールは当時はまだマイクロプロセッサーが登場していなかったので、シーケンサーのような回路をデジタルの論理回路IC(7400のようなゲート回路の入ったTTLとか集積度の高いMSI)を使って、その都度設計していた。あのボタンが押されて、このボタンが押されていた場合に、ゼロコンマ何秒後にどこがONになり、次にどこに知らせて、どんな状態で次なる入力を待つか、というようなことを回路にするのである。
当時はまだタイマー付のリレーなどを使っていたが、一部は論理回路の部分もあった。これで出来上がったものを試験するのだが、配線は社内でチェックしてOKでも、親会社の人がやってきて動作チェックをすると、思い道理に動かないことがあって、IC間の結線を変えなければならないことが起こってくる。ICはプリント基板上にガッチリ半田付けされているので、配線パターンをカッターで切って、細い線を半田付けして修正した。こういう完成後の微調整はアナログ回路の方がずっと簡単で、デジタル回路の大変さを身にしみて感じたものである。
その数年後、私がJAGATに入社していた時にマイクロプロセッサが登場し、上記のような動作やその変更はプログラミングで出来るようになった。私は上記の経験から、回路の動作がプログラマブルであることの有難さは十分に理解できたので、これからはあらゆるものの制御がマイコンで行われるであろうということを確信したし、このことに遅れをとったら滅びるしかないとも思った。幸い仕事自身も印刷関連の自動化の調査であったので、過去の経験は随分に役立った。
その後に同じように「伸びるか、滅ぶか」という二者択一の局面に出くわしたのは10年とか20年ほど経ってネットの自由な利用ができるようになった時だ。このことは今更言うまでもないが、こういった局面で100%過去から未来にスイッチできるかどうかが重要で、私は印刷についてはまだ過去のアナログのノウハウを身につける前にデジタルにスイッチを切ることができた。とはいっても印刷に至る工程が完全デジタルになるには20年間かかったので、アナログとデジタルの併用の中でデジタルのロードマップを作るという仕事だった。同じような仕事をするにしても、心積もりが完全にデジタルになっていることは重要である。
ネットに関しても同様に、今はオフラインとオンラインは並存するわけだが、将来オフラインが消滅する分野が何であるのかを想定してかかるということが重要だと思う。