投稿日: Jan 06, 2011 11:4:58 PM
事業計画作りに苦悩している方へ
エレベーターテストといって、投資家とエレベータに乗り合わせている1分ほどの間に、自分のやりたいことやメリット・利益性をプレゼンテーションできるかどうか、というのがITバブルの頃によく取り沙汰された。実際にそれをしたら投資してもらえる成功率が高まるというものではないだろうけれども、1分でプレゼンできるほど事業計画を練り上げておくことの重要さを表したものだ。逆に言えば何かやりたいことがあっても、記事『技術決定論でも、社会決定論でもなく』で書いたように、事業を進める上で考慮すべき事柄が多くあるので、一口にはいえないのが現状である。大まかな方向性は示せても、具体的にどれだけのことができると、どれだけ稼げるか、などはいくつものシナリオを考えるからだ。
だから事業計画のプレゼンというのは、あるテクニックが必要で、相手が何者かを見て、その視点に合わせて語らなければならないという、マルチなものである。投資家はその事業の独自性よりも、さっさと儲けられるかどうかに高い関心があるかもしれない。そうすると長期の理想を語るのではなく、事業を成立させる環境が整って時機到来に至るまでの過程にどうやって食っていけるかがきっちり設計されていることが問題になってくる。経営層は一緒に夢を担う仲間だし、従業員は会社の将来に期待するように、他のステークホルダ、取引先に対しても同じで、それぞれの視点で考えたものの統合が事業計画になる。そこからのプレゼンには多くの引き出しが必要だということだろう。
今華やかなネット上のサービスも、短期間にブレークしたように見えても、それ以前のコンセプトや計画作りに何年もかけていたものが多くある。そういった水面下の何年かの間に膨大な議論や書き直しがあって、多くのプレゼンの引き出しが用意され、総合的に15分くらいのプレゼンテーションができて、さらにエレベータテストのような瞬間芸に至るのであって、エレベータテストだけを真似ることはできない。またこういった何年にも及ぶ事業計画の練り上げは、一人の頭の中でできるものではなく、ステークホルダになりそうな人たちとのコミュニケーションや、近未来的な視点を与えてくれるフォーラムやコンファレンスなどでビジョナリーと呼ばれる人の話を聞くことの積み重ねでできるのだろう。そういった事業計画の肥やしになるような環境を自分で作ることが重要である。
世の中にはトレンドに関する情報はあふれるほどあっても、自分がフォーカスすべきことを基準にふるいをかけて、役に立つ情報環境を構築することが情報リテラシーでもある。今日のネットメディアは個人が設定できる要素が増えていて、フィードでもソーシャルメディアでもtwitterでもチューニング次第でどのようにでもなる。ソーシャルメディアにどんな意味があるか、twitterは役立つかという議論は意味がなく、自分が使いこなせるかどうかだけである。これは日本経済新聞がどの会社にも配られたとしても、そこから何を抽出して役立てるかは個々に異なっているのと通じる。ただ今日ではネットメディアの比重が高まっただけである。例えばtwitterではステークホルダや競合会社、仮想ライバルの重要な人をフォローしておけば、マスメディアでは得られない多くの情報が得られる。これに前述のフェースtoフェースのコミュニケーションが重なっていることが、今日の事業計画作りには必須だろう。
★2011年1月28日(金) 19:00~21:00