投稿日: Feb 18, 2015 1:12:55 AM
自費出版でも価値のあるものはあるが、娯楽作品というのはそういうところからは産まれにくい。無いこともないのだろうが、エンタメとして熟達したものを個人が一から商品の形になるまでやり遂げることは一般にはない。小説家でそういうことができる人がいるではないかと考えるかもしれないが、指折り数えるほどだろう。
日本で書籍が年間に8万点も発刊されるものの99%はグループ制作だろう。今はひとつのテーマでアニメや漫画・映画、またゲームに展開する場合もあるが、当然ながらそれらもそれぞれがグループ制作である。エンタメの中では唯一小説だけが個人制作が完結できる例外だろうが、文芸ものも一般には著者と編集者とのやり取りを経て日の目を見るようになる。
別の言い方をすると、自力で作品を完結できる著者に任せたら、発行される文芸書は100分の1になってしまうかもしれない。ライフワークとして取り組んでいる著者はそれでもいいという人もいるだろうが、出版社としては発行点数を減らしては経営がなりたたない。いっそのこと出版社も思いっきりシュリンクしてしまえば、泡沫のような書籍は一挙に減ってしまうだろう。
しかしエンタメというのは当たると大きいので、文芸書に限らず漫画も映画も音楽も何とか経営が続くようなスキームとか分業体制を築いてきた。実際にどのような作業をしているのかは、それぞれの媒体ごとに異なるのだが、ザクッと言えば次のようになる。
この図は映像に寄った書き方をしているが、先に作品ありきではなく、まずエンタメビジネスとして「F1層が今欲しているものは…」のような話の上に商品企画がされて、映画のような巨額の投資が必要な場合は資金調達が問題になる。小説でもいくらか前金を払ってでも書いてもらう場合がるだろう。こういうことを画策するのが「アバボ・ザ・ライン」と言われるところなのだろう。
実際に制作に関るのがラインである。古典作品でも実際の商品にするには手を入れるとか書き直すとか、当然新規ではレビューをする編集の手間が必要だし、また多くの場合は編集やエージェントとの相談の上で作品は作られる。ラインの専門スタッフは作る媒体によって異なり、規模の大小はあるが、みんなプロの職人さんであろう。
その先に撮ったフィルムやデータを仕上げる工程があって、それは日本では馴染みがないかもしれないが、もっとも相応しいネーミングは「ポストプロ」だろう。ただし、ここは校正の直し作業のように、映画であっても部分変更があるとか、アニメでも筋書きが変わってしまうなど、プロダクションの延長的な作業になる。
その先に、「ビロウ・ザ・ライン」と言われる、複製から販促・販売の世界があって、生活者にはそこが接点になる。このエンタメが「なんぼ、もうかる?」というのは「アバボ・ザ・ライン」と「ビロウ・ザ・ライン」がくっついて画策し、「ライン」の方は売れても売れなくても仕事にはあまり関係ない。
こういうスキームも、ネット経由ですべてが行われるようになると、変節はまぬがれないのだろうが、いつのことか?
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