投稿日: Dec 19, 2011 1:59:51 AM
EPUBはどのように市民権を得るのかと思う方へ
クラウド型汎用書籍編集・制作サービスであるアンテナハウスのCAS-UBのblogで『2012年EPUB3ブレークの条件』という記事があった。第一にEPUB3の優れたリーダー、第二にiBookstoreのようなビジネス環境、第三にEPUB3でなければできないユニークな価値実現で、2011年では一つも満たされなかったが、2012年に期待したいということである。eBookを盛り上げるのに電子書籍端末というガジェットの話題性に引っ張ってもらっていた時代は終わって、機能勝負、実力勝負の時代になってきたということだろう。
逆に言えば今のEPUBは機能的には中途半端なものでしかない。特にEPUB3.0なまだリーダーが未熟で、これは統一感のあるAppleのiBooksに期待がかかっている点だが、アテにはできない。iBooksはHTML5と絡んで独自の発展をする面もあるからだ。大会社に期待するだけでなくリーダー開発者の連携を取るところも必要だろう。幸いブラウザと違って寡占状態ではないので、今がコンソシアムでSIGでも作るにはちょうどいい時期かもしれない。PCやAndroidのようにリーダーの機能がバラバラであると利用者の信用をそこない、アプリ・サービス専用のEPUBリーダをダウンロードしてEPUBを閲覧することになり、かなりみっともない。オープンなリーダーを広めるには、コンテンツとリーダー機能の関係が分かりやすいレベル分けが必要かもしれない。
EPUBの中途半端さは、PDFのような表現力も再現性もないので、PDFの置き替え用途はそのままではできないところにもある。現状ではPDFで済むものはそのままにして、EPUBのユニーク機能で売り込むしかない。しかしPDFを売り込んだAdobeのような企業活動による啓蒙はEPUBの場合は行われないことはオープンソース的な流れの弱点でもある。幸いマイクロソフトはPDFに正面切って対抗しなかったように、EPUBにも対抗する様子はないのはよいことだ。それで今はフリーに近いEPUBツールがいろいろ出せる状況であるが、フリーに近いものは機能が限定的で、ある意味ではEPUBの中途半端感を助長しかねない。
以上、技術的な面から考えるとEPUBを盛り上げるにはまだ不透明なことが多いように見えるかもしれないが、DTPの始めでも何でも最初は中途半端で不透明であった。その中でも何らかの新たな可能性を見出して利用してくれる人がいたからDTPもWebもスタートできたのである。つまりコンテンツホルダに対してアピールする点をもっと強調する必要がある。それは「自分の手でここまでできるのだ」、という手ごたえを感じてもらえる技術であること、つまりPublisherのための技術であるという意識になってもらう必要があると思う。
当然ながらEPUBツールだけで編集に十分であるとは言えないので、いろんなツールや利用環境とともにうまく組み合わせて使う必要はあるが、それは以前に比べて遥かに充実してきたことが、EPUBの追い風になるであろう。